ときめきメモリアル4(コナミ)

項目シナリオシステム音楽総合
ポイント4+4+4+
シナリオ:
原画:
音声:フル
主題歌:有(オープニング:『手のひらの勇気』/エンディング:『believe me, I believe you』/『海が運ぶうた』)

<シナリオ>
 初代の『ときめきメモリアル』がそうであったように、主人公が3年間の高校生活を過ごす中で女の子と出会って恋をして、最後は女の子と結ばれるという大枠組はあるものの、ストーリーらしいストーリーはありません。
 否、ストーリーフリーのエピソード連続型なので、ストーリーは「ない」けど「ある」、と云ったほうが正確でしょうか。
 これは、同じコナミの『ラブプラス』のレビューでも書いたことなので一部被ってしまう部分はあるのですが、3年間の中で女の子との出会いから始まり、細かいイベントがあって最後に告白されて、という、エピソードレベルでの物語は存在します。
 が、ひとつのイベントが発生し、その次のイベントが発生するまでの間のストーリーというものは一切説明はされません。
 そこは数値が上げ下げされる学園生活としてのみ擬似的に描写され、具体的になにがどうなったというストーリーは、時折起こる突発的ないっしょに下校をしたりするイベント以外のところではまったく描かれることはないわけです。
 それぞれがバラバラに存在しているエピソードをプレイヤは頭の中で繋げていき、その中で実際には描写されないイベントとイベントの間をプレイヤで想像し、最終的には3年間の学園生活というストーリーがプレイヤの中ではしっかりできあがっています。
 ストーリーが「ない」けど「ある」と云ったのはそういう意味です。だから、10人いれば10通りのストーリーが存在するのが、ストーリーフリーでありながらストーリーが存在する『ときめきメモリアル』という作品の妙味であり面白いところでしょう。
 そんなのギャルゲーなんてみんなそうじゃないかと云う話もあるでしょうが、これがなかなかにそうはいきません。シミュレーションゲームとは何かを「シミュレーション=疑似体験する」ものである以上、エピソードとエピソードの繋ぎ目や、描写されない普通の部分がなおざりなままでは、それを「体験」として昇華させることはできないのです。
 それは、イベントの置き方であったり、そもそもイベントそのものの終わらせ方であったりとさまざまな要素が組み合わさった上で構築される世界観によるところが大きいわけで、非連続した二つのエピソードが同一の時間軸上にあるという設定の上で二つのイベントを並べても、その並べ方が歪なままではそこに連続性を感じることができません。
 ところがこの作品は、そのあたりが非常にうまく作られています。
 たとえば、多少のネタバレになってしまいますが、「みんなが憧れる、一目置く先輩と廊下ですれ違う」イベントが発生し、「その先輩から生徒会に誘われる」イベントが発生するという流れがあるのですが、ここで「憧れの先輩の存在を匂わせつつ、主人公とは無関係だというエピソードを強調」しておき、次に「生徒会に誘われることで、無関係なものが関係性あるものへと変化する」流れを作ります。
 ここでは、「自分とは無関係である」ことを強調しておくことがきわめて大切で、ここで「ただ単にそういう人がいる」だけでは、エピソードレベルでの繋がりが断絶してしまいます。
 ここで誤解してはならないのは、エピソードレベルでのイベントそのものが断絶しているのは、これはまったくもって自然なことです。キャラクタ性さえ統一されていれば、そこに断絶が生まれないはずはありません。バレンタインデーの翌週に水族館で魚を見るイベントがあってもいいのです。
 問題は、エピソードとエピソードの間の、描かれていない部分に空白を作る「断絶」なのです。
 先の例で云えば、「自分とは関係がないという関係」を作っておくことで、次のイベントまでの描かれていない部分を繋ぐことができます。が、ここで「そういう人がいる」だけで終わらせれば、その部分は空白になってしまいます。
 その描かれていない部分は、プレイヤからしてみれば「普通の学生生活を送る」毎日なわけですし、そのイベントが起こるまでに女の子から何らかの心理的変化があったんだな、ということが後から想像できます。
 そしてこの想像が、この作品におけるシナリオの大半を占めているわけです。
 なので、たとえば誰か一人のキャラクタのエンディングを見たとき、そのプレイヤの頭の中には、そのキャラクタと過ごした三年間のストーリーがきっちりと印象として残るのですね。
 初代のころから、いわゆる「ショートストーリー」という文化が『ときめきメモリアル』において盛んに行われてきたのは、そういったバックボーンストーリーに対しての想像力を最大限に出すことができる土壌があったから、というのもあったのでしょう。
 コミュニケーションを目的とした『ラブプラス』と比べると、ゲームとして登場するキャラクタが多岐にわたり、結果として目的のキャラクタ以外のキャラクタとのご機嫌取りとして行わなければならないデート、いわゆる「爆弾処理」が必要になる点が決定的に違っています。
 ストーリーとして見た場合、この「爆弾処理」は一種のノイズです。エピソードとしては不自然なデートが、「それをしないと不利益を蒙るから」という理由でのみ行われることになるからです。
 なのですが、この「4」ではそのノイズをもうまくストーリーに組み込もうという意図が見られます。
 特定のキャラクタを最大に仲がいい状態まで持って行き、その状態で別のキャラクタといっしょに特定のポイントに行くと、仲がいい女の子が嫉妬するイベントがあったりと、「ストーリーを見せる」上でなかなかに面白い試みだと思います。
 また、一部キャラにおいては、そういった「想像」を軸に置いたところから、純粋な物語を作ろうとしている展開もあったり、いろいろと挑戦している感じはものすごく伝わってきます。
 『ラブプラス』の項目でも書いたように、あくまでもこの『ときめきメモリアル』という作品は空っぽの入れ物で、そういった「爆弾処理」を含めたところまで、3年間の高校生活をうまくシミュレートしつつ、入れ物に入れるものをプレイヤが選択し(あるいは選択させられ)、修学旅行などの実際に学生生活に体験したであろう「リアリティ」を生んだうえで、結果的にひとつの話が出来上がっているという感じに仕上がっています(ここでは「リアリティ」という言葉の使い方の説明は省略します)。
 攻略キャラクタは隠れキャラを含んで12人。それぞれ特徴をうまく分散させていて、それぞれに魅力的に仕上がっています。
 ここもまた、キャラクタを極端に絞った上でステレオタイプの設定を載せた『ラブプラス』とは異なり、キャラクタ一人一人に相当に癖を作っています。
 尤も、『ラブプラス』はステレオタイプなキャラクタ三人を置き、そこからリアリティを得ようとしていたのに対し、こちらの作品のキャラクタは「ゲームに登場するキャラクタ」として存在しているわけで、ある程度癖があるのは仕方がないところでしょう。
 ですが、それはステレオタイプの特徴を煮しめて昇華させたものであって、そこにできているものはあくまでもステレオタイプの延長線上にあるものです。
 と云うと一見悪口のように聞こえてしまうかもしれませんが、そうではありません。ステレオタイプも煮詰めていけばここまで面白くできるということの証明であって、さらにステレオタイプの延長だからこそそこにはリアリティを残したまま癖を演出することができるのです。
 だから、たとえば「ツンデレ」とか「生徒会長で優等生」とか、そういうステレオタイプなイメージを利用しつつ、そこに少しずつ「ちょっと普通とは違うな」というキャラクタを印象を残すことができます。
 そしてそれが、結果としてキャラクタの魅力につながっているのかな、という気がするのです。
 と云うわけなので、キャラクタは非常に魅力的です。後の項目で詳説するように、この作品は単純にゲームとして非常によくできた作品ではありますが、やってみるとそのキャラクタの魅力にも気づくのではないかなと思います。
 これがあくまでも「ギャルゲー」というカテゴリである以上、それは必然でありもっとも重要なことのひとつではありますが、それはかなり高いレベルでクリアしています。
 キャラクタの行動パターンも単調ではなく、最初のうちはなかなか本心を見せてくれなかったり、デートに連れて行ってもなかなか喜んでくれないキャラクタもいますが、友好値がある一定値を超えるととたんにどこへ連れて行っても喜んでくれたりします。このあたりの演出は絶妙です。
 もちろん、ストーリーで感動して泣くとかそういった作品ではありません。ですが、たとえば普通の物語型アドベンチャーゲームにおいて、普通の三年間の高校生活における普通の恋愛を書ききることなど不可能でしょう。
 それをもしやろうと思えば膨大な量のテキストが必要になりますし、そもそも途中でダレてしまって読ませるどころではありません。
 そういった意味では、「想像する物語」としての完成度はとにかく高いです。そしてそれを彩るキャラクタも魅力的で、ストーリー周りがハイレベルにまとまった作品だと思います。

<CG>
 さすがに安定しています。
 立ち絵を含めたイラスト全般については、初代の頃はややクセが強い印象がありましたが、若干そのクセの強さは残ってはいるものの、それでも以前ほどではありません。
 尤も、一枚絵に関しては特にそのクセの強さを感じることがあり、馴染まない人には徹底的に馴染みづらい感じがするかもしれませんが、それでも初代ほどのアクの強さがあるわけではありません。慣れてしまえば初代の絵もさほど違和感を感じなくなりましたが、この作品に関しては、そこまでの「慣れ」を必要としないのではないかなという気がします。
 どちらかと云うと目が小さくて頭身が高い、リアルに近い感じの絵で、アダルトゲームなどで現在主流になっているタイプとは若干異にするものの(もちろん劇画調であるとか云うわけではありません)、そのぶん一般的には馴染みやすい絵柄なのではないかなと思います。
 立ち絵は『ラブプラス』ほどではないものの、表情以外のポーズにも若干の動きがあり、見ていると楽しくなってきます。動きのパターンは決して多くはありませんが、この微妙な動きのおかげでその少なさを感じることはありません。
 また、それのおかげでポーズの移り変わりが、立ち絵から別の立ち絵に切り変わるというデジタルな感じではないので、割合ナチュラルになっているのもメリットになっていますでしょう。
 この立ち絵も、初期状態と友好値最高の「ときめき」状態では着ている服や水着が違っていて、特に水着は「ときめき」状態になるととたんに大胆なデザインになったりと、なかなかに凝ったつくりになっているのが面白いところです。
 また、要所要所に出るSDキャラクタは、その動きも含めて実に可愛らしく、マスコットとして非常にいいアクセントになっています。ここも何気に見所ですね。

<システム>
 いわゆる「ギャルゲー」としてではなく、純粋に「ゲーム」として高く評価されたのが、初代の『ときめきメモリアル』という作品の最大の特徴でしたが、この「4」においてもその流れはしっかりと受け継いでいます。
 それぞれのパラメータをコマンドによって上げていき、女の子との恋愛を成就させる、というのが主要な流れですが、このパラメータの数値に関する設定が絶妙で、単純作業になりがちな「数値の上げ下げ」を、キャラクタの登場タイミングやイベントの発生タイミングなどを絡ませることで上手く作業感を消しています。
 これがストーリーテリングに与える影響は「ストーリー」の部分に譲るとして、ゲームとして考えた場合、基本的にこの作品においてプレイヤができることは「パラメータを操作する」ことだけですから、そのアプローチが上手くいかないとものすごく単純作業になってしまうのですね。
 『ラブプラス』では、キャラクタとのコミュニケーションにメイン部分を振っているところがかなり大きく、このパラメータの上げ下げというのは正解の見えている単純作業になりがちなところがありましたが(尤も、あの作品はそれが本筋ではないのでそれでいいのですが)、この作品ではそこまでの単純さはありません。「あっちを上げればこっちが下がる」のがパラメータいじりゲームの基本ですが、その「上げ下げ」のポイントが絶妙にバランス取りされていて、慣れるまではなかなか一筋縄ではいきません。が、それが逆に楽しかったりするわけです。
 ある程度慣れてくると、すべてのパラメータが高いところで維持できるようになりますし、ゲーム後半になるとパラメータで困ることはさほどなくなるものの、それでも決して簡単だと云うわけではないですし、キャラクタによってパラメータを育てていかなければならないので、単純にボタンを押すだけの作業になることはあまりありません。アイテムや特技といった要素がそのパラメータいじりを複雑かつ面白いものにしていて、このへんのバランス取りは本当に絶妙だと思います。
 逆に、やや単純な印象を受けるのがデート部分です。
 この作品において、デートはキャラクタと仲良くなるための手段であると同時に、長い間会わないでいて傷心度(という不可視のパラメータが設定されています)の上がったキャラクタに発生する「爆弾」を処理するためにも行われます。
 この「爆弾」を放置して爆発させてしまうと、意中のキャラクタを含めた全員の好感度が下がってしまいますので、シナリオの項目にも書いたような「爆弾処理デート」が必要になってきます。
 キャラクタゲームとしてこの作品を考えた場合、デートのパートというのも重要なウエイトを占めてくるのはある意味で必然ではあるのですが、これについても初代からほとんど変わることはなく、「電話でデートの予約をする」→「デートに行く」→「選択肢を選ぶ」がメインストリームで、こちらからできることは「デートの場所と日時の設定」と「選択肢を選ぶ」のみです。
 選択肢も基本的に3つの中から「一番良さそうなものを選ぶ」だけなので、キャラクタによって「それが印象いいのかよ!」といった驚きがあったりすることはままありますが、特にこれと云ったゲーム性はありません。
 また、女の子と仲良くなっていくと、女の子と手をつなぐことができるようになるミニゲームが発生しますが、これもそれほどのゲーム性があるわけではありませんので、基本的にこのデートに関しては「女の子の台詞や反応を見る」という恋愛シミュレーションゲームならではの要素に切り替わります。
 まあ、デートの部分をいたずらに複雑にしてもただゲームが煩雑になるだけでしょうし、これはこれでいいのかもしれません。もちろん、そういった「反応を見る」という意味合いでは、キャラクタの台詞回しなどは非常に魅力的に設定されていますから。
 また、これも非常に大きなポイントなのですが、初代では一回一回のゲーム性が重要視されていたのに対し、この「4」では周回プレイややり込みの要素が多分にあります。
 一部アイテムが次に持ちこされたり、パラメータなどを上手く補正してくれる「特技」は一度開いたものであれば次のプレイ時にも持ち越せたりと、周回プレイが苦痛でないような配慮がされているのです。
 さらに、CGはもちろんですが、さまざまなクリア状況によって与えられる「勲章」までコンプリートしようとすると、これは一人のキャラクタを一度クリアしただけでは不可能なようになっています。
 ただし、特に勲章に関しては、別にコンプリートしなくてもゲームそのものに影響はないので、純粋に「やり込み」としての要素です。
 そのほかにも、ミニゲームとして途中に入る「運動会」「縁日での射的・金魚すくい」などの記録も次プレイに持ち越されるため、こういったところでも細かくやり込み要素が組み込まれているのが特徴的です。
 たとえば、運動会では「運動」パラメータが多ければ多いほどいい結果が出せるので、徹底的に運動パラメータを上げて記録を残そうとか、そういった楽しみ方ができるようになっているのですね。
 キャラクタが多いため、単純にオールクリアしようとしただけでも何周もしなければならないのですが、それが苦痛になりません。これは結構凄いことだと思います。
 ちなみに、ゲーム全体としては初代ほどシビアではなく、ややマイルドに作られています。初代で鍛えられた人には若干物足りなく感じるかもしれませんが、その結果として周回プレイが初代よりも格段に楽しくやりやすくなっていますので、そこは逆にプラスポイントだと思います。また、その結果として、初代のように「露骨なお邪魔キャラクタ」もいません。
 プログラム的には、細かい誤字脱字はあるものの(背景の描き文字の「新刊」が「新巻」になってたりとなかなかにアレな間違いがあったりとかします)、システムとして致命的なバグはありませんでした。
 これも最近のPSPソフトとしては一般的な「メモリースティックへのインストール」ができるのですが、どうやらこのソフトの場合はシステムデータを全部インストールするわけではないようで、あまりメモリースティックの容量を食わないかわりに、ゲーム中に何かがあると「NOW LOADING」画面に切り替わりますし、たとえばデートの際に選択肢を選んでから女の子の表情が変わって台詞が出るまでに1秒程度のタイムラグが発生します。このへんにちょっともっさりした印象をどうしても受けてしまいます。このへんがちょっと惜しいところでしょうか。
 また、この作品の大きな特徴として「自分の名前を呼んでくれる」システムがあるのですが、これがものすごくよくできています。こちらは「音楽」の項目で詳説します。

<音楽>
 音楽もシリーズならではの、キャラクタや雰囲気を掴んだ耳馴染む曲が多くていい感じなのですが、それ以上に驚くのはやはりよくUMDにここまで入れたなあ、というくらい完全なフルボイス仕様でしょう。
 決して少なくないキャラクタ数とそれぞれのパターンにきっちり対応した音声がちゃんと収録されており、プレイヤを楽しませてくれます。声のトーン自体も違和感なくそれぞれにはまっていますし、ここのあたりに関してはまったく文句はありません。
 また、この音声にはふたつ特徴があって、ひとつは上の「システム」の項目でも書いた「名前を呼んでくれるシステム」、もうひとつは「バイノーラル録音」です。
 ひとつめの「名前を呼んでくれる」のは、文字通りキャラクタがこちらの名前を呼んでくれるというものなのですが、これが画期的かつ素晴らしいのは「どんな名前でも対応できる」ところでしょう。
 これは「2」あたりで実装されていたシステムだそうなので今更何を、という話ではあるかもしれませんが、読み仮名とイントネーションを設定することで、あまり一般的でない名前であっても違和感なく呼んでもらうことができます。
 実際、わたしの名前は名前としては相当に変わった名前なのですが、それでもほとんど違和感なくキャラクタから名前を呼んでもらうことができたので、おそらく実用性レベルではまったく問題ないでしょう。
 ネットに繋いで音声をダウンロードする形式なので、PSPがネットにつながる環境がないと(要するに無線LAN環境がないと)できないのがもどかしいかもしれませんが、環境さえあればひと手間かけてもやる価値はあります。
 そしてもうひとつが「バイノーラル録音」。一部のイベントでステレオサウンドを最大限に活用し、耳元で囁かれているような臨場感ある音声が楽しめる、というものです。ただしこれを楽しむにはイヤホンが必須です。PSP本体のスピーカでは「ちょっと音が偏ってるなあ」くらいしかわかりません。
 これもなかなかよくできていて、イヤホンをした状態だと本当に耳元で声が聞こえるような感じがします。このへんも面白い試みだと思います。

<総合>
 この作品の特徴は、これは初代から云われていることではありますが、「分断したエピソードをプレイヤが独自の物語として組み立てられる」「エピソードとエピソードの間はプレイヤが自由に想像できる」「パラメータをトライアンドエラーで細かく調整していく単純ながら奥が深いゲーム性」「徹底したやりこみ要素」など、まさに『ウィザードリィ』などのそれだと思うのですよ。
 ゲームとして作業にならずにどこまでも続けていけて、パーティの設定や迷宮内でのパーティの会話などを「想像して楽しむ」ことができる『ウィザードリィ』もこの『ときめきメモリアル4』も、根源的には同じところにあるのではないかと思うのです。
 いわゆる「キャラクタのみを売りにした」ギャルゲーというジャンルが、一時期の趨勢がウソのように波が引いてしまっているのは、そういったゲーム性を蔑ろにして「お前らこういうのが好きなんだろ?」とでも云うかのような、キャラクタのみで自己主張をした「お手軽ギャルゲー」が蔓延し、ユーザのほうが引いてしまった結果なのではないかと思います。
 そんな中で、この『ときめきメモリアル』が「4」までシリーズとして出ているのは、やはりこの作品が単純に女の子キャラクタの魅力だけを売りにするのではなく(もちろんそこも重要なファクターであり、それは充分にクリアしたうえで、という話ですが)、しっかりとしたゲーム性とバランスを組んだうえでこの作品が作られているからなのではないかと思います。
 この作品、発売当初は、話題になっていた『ラブプラス』の影に隠れていた感じだったものの、シリーズとしては異例のいわゆる「ヤンデレ」キャラクタがいたことで大きな話題を呼んだわけですが、実際にやってみると、そういった目先の話題性以前に、ゲームとしてしっかり丁寧に組まれているなあというのを実感します。
 ゲームが好きな人というのはなかなかこの手のゲームを敬遠しがちなのですが、そういう意味でそういう方にこそやってみていただくと面白いのかなと。もちろん、ギャルゲーというものに抵抗がない人であれば、これはもう間違いなく楽しめること請け合いです。
 「ギャルゲーとして」はもちろん、「ゲームとして」の完成度も高いこの作品、人によっては『ときめきメモリアル』というブランド名が逆に災いして「いまさら『ときメモ』もないよなー」という考えに至るのも理解はできるのですが、そういう思いをいったん横に置いておいて、実際にやってみると本当に楽しめる作品なのではないかと思います。

2010/02/06

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