ラブプラス(コナミ)
項目 | シナリオ | 絵 | システム | 音楽 | 総合 |
ポイント | 4+ | 4+ | 4 | 4 | 9− |
シナリオ:−
原画:ミノ☆タロー
音声:フル
主題歌:無し
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<シナリオ>
いわゆる『ときめきメモリアル』タイプの(という括りもいささか乱暴ですが)ストーリーフリーな恋愛シミュレーションゲームなので、ストーリーと呼べるようなストーリーはありません。
登場する三人の女の子がそれぞれに簡単な背景設定を抱えているので、それがストーリーと呼べなくもありませんが、それは主ではありません。
この手の作品がたいていそうであるように、作品のほうではストーリーを想像させる背景だけを与え、こまごまとしたストーリーについては個々人の想像にお任せしますというつくりになっています。
ですので、こういった恋愛シミュレーションジャンルの作品においては、いかにその「作中に描かれていないストーリーをユーザに想像させるか」というところが勝負の分かれ目になってくるわけですが、この作品では、このあたりのつくりというのが非常にハイレベルにまとまっています。
端的に云えば、キャラクタの書き出し方が非常に巧いのですね。
基本的に地の文章がなく、台詞と主人公の内面とメールの文章だけで進行していくつくりですが、その台詞ひとつひとつ、メールの文章ひとつひとつが、「自分にこんな仲のいい女の子がいたらこんな風なんだろうなあ」というのを巧く想像させてくれるのです。
と云うと非常に簡単なことなようなのですが、これがこの手の作品の出来を左右する、非常に難しいものなのですね。
とにかくそれっぽいこと(と云うのもあいまいな表現ですが)を云わせるだけでは、実はその完成度は低くなってしまいます。そこにある程度の「現実味」を入れることで、その作品やキャラクタがより身近なものとして感じられるようになるわけです。これは「リアリティ」と云い換えてもよいかもしれません。
前者の、ひたすらに台詞の中に「こういう台詞は可愛いだろう?」という要素を突っ込んだだけでは、その「リアリティ」が生まれてこないのです。
もちろん、それがあまりに現実的であっても、今度はそれがゲームとしてのキャラクタ性を破壊してしまいます。
と云うと一見矛盾しているようですが、このレビューページでは何度も書いているように、「リアリティ」というのは「現実と同じ」という意味ではありません。恋愛シミュレーションで云うのであれば、それぞれのユーザが頭の中で描いている「理想の恋愛とはこういうものだろう」という想像にいかに近くするか、ということです。
今現在、コンシューマ・パソコンとハードを問わず、ストーリーを持たないタイプの恋愛シミュレーションゲームというのはきわめて少なくなりましたが、これはそのストーリー以外のところでキャラクタの魅力を説明するというのがきわめて難しい、というのがひとつの原因なのでしょう。
そしてそれを煮詰められない以上、恋愛シミュレーションは、キャラクタの絵が違うだけでほぼ同じシステムのゲームしか生まれてこなくなってしまいます。『ときめきメモリアル』の後に出てきた恋愛シミュレーションが、『ときめきメモリアル』を超えられなかったのは、結局それ以上の付加価値をつけることができなかったからなのだと思います。
つまり、『ときめきメモリアル』は空っぽの入れ物で、それに何をどう入れるかはユーザが決めることでした。その入れ方、入れるものなどによって、ユーザは頭の中で作中で説明されない「物語」を構築し、自分の経験と照らし合わせることでリアリティを生んでいたわけです。
ところが、その入れ物を作る作業というのは実は難しく、結局のところ表の柄だけが違う入れ物が大量生産されたという、これが『ときめきメモリアル』の後に大量に出てきた恋愛シミュレーションの状況です。
もちろんその中には、『ときめきメモリアル』とはまた別の入れ物を提供してヒット作になったものも多々ありますが、その多くは外面がちょっと違うだけのものでした。
と、そこに「物語」を入れることができれば、キャラクタの魅力を物語の魅力と絡めて説明することができるわけですが、それは上の例えで云えば、既に食べ物が入った入れ物で、その中に入った食べ物の味……つまり、物語で説明される部分がキャラクタのほとんどで、日常を含めたすべてを想像させることによるリアリティは希薄になります(なくなりはしませんが、これはまた別の話なので今回は割愛します)。
そこでこの作品の話にようやく戻ってくるわけですが、この作品では、そのへんのリアリティが絶妙に表現されています。
まずは会話の端々にうまく間を持たせ、時間の経過と会話の進行を同時に表現するというテキスト描写。というとややこしいことを云っているようですが、要するにきわめて単純なことで、意図的にかどうかはわかりませんが会話の中で台詞のひとつひとつを構成する要素が連続しておらず、キャラクタがそこで次に発する台詞を考えている、という演出になっています。
さらに、その中で語られる文章も、「現実」にあるような生々しさはなく、それでいていかにも物語上でのキャラクタ性のみを追いかけた、主人公に「媚びた」台詞回しではなく、キャラクタと主人公が対等であるという前提で会話が進みます。
だから、主人公からの語りかけも、恋愛シミュレーションにありがちな「女の子にひたすら媚びる」というなんだか悲しくなってくる感じもありませんし、それがまた友達の延長として恋人というところにいきついた、という「リアリティ」を生みます。
繰り返しになりますが、ここで云う「リアリティ」とは、現実の女性とのお付き合いとそっくりだという意味ではありません。あくまでも、自分の中で構築された理想の「こうあるべきである」という恋愛イメージに近い、という意味です。
恋人になったらこういう話をして、こういう風にメールのやり取りをして、そのメールもこんなに甘い文章で……という、自分の中にある恋愛の究極的な形を見せてくれているわけです。
もちろんそれは人によって違いますから、最大公約数的なところを追いかけるよりほかにないわけですが、それがうまく最大公約数になっているからこそ、これだけ多くの人に支持されているのでしょう。
ということなので、ここで描かれるキャラクタも非常に魅力的です。
恋愛シミュレーションゲームでは、この「キャラクタの魅力」は非常に大きなウエイトを占めるわけですが、この作品の方法論は「これだけたくさんキャラクタを用意しました、お好きなタイプをお選びください」というものではありません。登場するキャラクタは3人のみです。
この3人も、ゲームやアニメキャラならではの奇抜な設定などがついているわけではなく、性格付けなどはきわめてシンプルです。
ですが、ここではそういうわかりやすさがいい方向に作用しています。
システムの項目で詳しく書きますが、この作品ではゲーム内の会話や選択肢などで女の子の性格が変化します。それがこの作品の面白さのひとつなのですがそれは後に譲るとして、そういうシステムを考えても、このベースとなる性格はシンプルでステレオタイプなほうがよいわけです。
面倒見が良くて大人しい女の子がぐいぐい強気に引っ張っていくタイプになったり、あるいは強気でつんつんしている女の子が素直に甘えてくるようになればそれはひとつ時間の経過と女の子との関係性を感じさせてくれるわけですね。
そんなの別に奇抜な設定でも同じじゃない、という話になるわけですが、それでは駄目なのです。奇抜な設定付けというのは強烈な個性であり、作品の中で設定だけが自己主張してしまって、そこにひとつの物語ができてしまいます。
たとえばものすごく極端な例で云えば、実はその子はもう死んでて幽霊、なんていう設定付けをしたとしましょう。それはそれでストーリーを想像するに魅力的な設定なのですが、作中で「どうしてそうなったか」「最後にどうなったか」を説明する必要が出てきます。
それを説明すると、今度はそこにその物語が生まれてしまうのです。
これだけ奇抜な設定のキャラクタが増えている中で、色物を狙わなかったというのは、ある意味で勝負ではあったのかもしれません。
それをあえてせず、「描かない」ことでその間の物語を想像させる手法というのは、ユーザに無限の想像の余地を与えます。
かつての『ときめきメモリアル』がそうであったように、語られないことによる物語の深遠さは人によって違う無限大のものです。そしてその物語が、あくまでもスタンダードな「普通に恋愛して彼女ができたときの生活」であることもまた大きな魅力たりえます。
そういう全般的に奇抜さのない物語のなさが、この作品に却って「リアリティ」のある物語を生み出しているという、一見すると矛盾していることが起きているからこそ、この作品の面白さがあるのではないかと思うのです。
<CG>
マニュアルなどのイメージイラストや一枚絵では、いわゆるアダルトゲームで主流の目の大きな絵よりもややリアルな感じで描かれていますが、これも等身の高い絵ではあるもののキャラクタの絵としての可愛さはちゃんとあります。このへんはアダルトゲームに慣れたユーザでもさほど抵抗もないでしょう。
ですが、メインは3Dで描かれたキャラクタになります。
いわゆる「立ち絵」なのですが、これがしっかりとモデリングされているので、ちょっと過剰なくらいに細かく動きます。最初のうちは違和感を覚えるかもしれませんが、次第に自然に(そして魅力的に)思えてくるでしょう。
くるくると変わる顔の表情も可愛らしいですし、なによりその仕草ひとつひとつがものすごくキャラクタを魅力的にしています。いまどきのゲームだと普通のことなのかもしれませんが、そういう技術がこれにも惜しげなく投入されていて、それを見ているだけで「いっしょにいる」というリアリティを作り出してくれるのですね。
また、「システム」の項目で触れますが、女の子の髪形や服装などはプレイスタイルによって大きく変わってくるので、そういうのを見て楽しむというビジュアル面での楽しみも存分にあるのは嬉しいところです。
<システム>
NintendoDS本体を縦に持たせ、ボタンを一切使わずにタッチペンのみで進行させるところがちょっと珍しい感じでしょうか。
恋愛シミュレーションゲームとして考えると、ゲームとしてはものすごく単純です。告白までは主人公の持つ4つのパラメータと女の子の好感度を上げていき、告白後も同じパラメータを調整しつつデートに誘うのがメインのゲーム部分になります。
デート内でもゲームと呼べる部分はあるのですが、話を簡単にするためにこことわけて考えてみます。
このシミュレーションパート、『ときめきメモリアル』などでは非常に戦略性を要求されましたが、この作品ではそれは特に必要ありません。朝・昼・夕方・夜の4回に分けてパラメータが上下するコマンドを実行させるわけですが、「体力がなくなるから休みを入れなければいけない」というような制約もありませんし、4つのコマンドを実行した結果どうなるかというのが明確にコマンド決定前に表示されるため、この通りにしておけば「大きくパラメータが下がる」ということはありません。
つまり、「正解が見えている」わけで、この部分はひたすらの繰り返しになります。
もうひとつ、デート部分は、単純に表示された選択肢を選んで進行していく部分もありますが、むしろそのほうが少なく、要所要所でタッチペンを使った「スキンシップ」が入ります。
このスキンシップがこの作品の大きな特徴のひとつで、画面に表示された女の子に、人目が少ない(人目ゲージがあります)ときにうまくタッチして、その後に髪の毛やら手やらをタッチすると女の子の反応があり、それによって好感度が上下します。
これも一応正解があるらしいのですが、どれが完璧な正解なのかはよくわかりません。まあ、失敗してもなにか大きくペナルティがあるわけではありませんし(好感度が下がったり、後述のキスモードに入れないことはあります)、思いのままに反応を楽しむくらいでよいのではないでしょうか。
このスキンシップモードが終わり、いいムードになるとキスモードに入ります。
女の子の顔が大写しになり、それをタッチペンで撫でて(実際には擦って)ゲージを貯め、ある程度ゲージが溜まるとキス一回分のハートになります。このハートは最大5個まで作れて、5個溜まるか溜まらなくてもある程度時間が経つと自動的にこのハートを貯める作業が終了します。
状況によって女の子が嫌がる場所を触ったりすると、せっかく作ったキス一回分のハートが壊されてしまいますから、状況を見ていろいろと試してみる必要があります。
とまあ、文章で書いたものを一見するとややこしいですし、実際に最初の数回は戸惑いますが、慣れてしまえばなんてことはありません。
これが終わると、ハートの数だけ女の子にキスすることができます。
キスもタッチペンを使い、画面に大写しになった女の子の唇や頬、おでこなどに状況に応じてタッチすることによって成立するようになっています。タッチペンを長く当てればその間ずっとキスしていることになり、ぱっとタッチして離せば軽い口付けのライトキス扱いになります。
タイミングを間違ったり、女の子が望んでいない場所にキスしたり嫌がる方法でキスしたりすると失敗で、規定回数のキスを大成功させると、最初の回数よりも一回少ない回数もう一度キスができるダブルアップ(という云い方はしないと思いますが)もあります。
この調子でデートを繰り返していき、女の子の好感度を上げていくのがゲームの目的です。
……と、延々とシステムの説明をしてきましたが、なんでそんなことをしたのかと云えば、基本的にやることはこれだけだからです。
この「これだけ」なのがこの作品のいいところでもあり弱点でもあって、最初のうちはいいのですが、だんだんとこれが「作業」になってきてしまうのですね。
もちろん、これがあまり難しくても、本来の目的であるところのコミュニケーションとは外れたところになってしまいますからこれはこれでひとつの形としてはアリなのですが、こうすれば失敗しないとか、効率よくキスのハートを貯めるにはこうすればいいとかというのがわかってくると、基本的にはゲームオーバーもエンディングもありませんから、只管にこれを繰り返すだけになってしまうのです。
特に、デート時の「スキンシップ→キス」の流れは、多いときには一回のデートで十回近くありますし、その中でも基本的にやることは同じですから、ちょっと作業として飽きてきてしまうところがないとは云いません。
そして、そのマンネリを打開するのが「リアルタイムモード」です。
これは何かと云えば、その名の通り、NintendoDS本体の時計を使い、今現在プレイヤが過ごしている時間とゲーム内の時間を同期させ、より彼女との生活のリアリティを出すシステムです。
これはどういうことかと云えば、たとえば今週日曜日13時にデートの約束をしたら、実際の今週日曜日の13時にゲームを起動していなければいけませんし、今日がクリスマスならゲーム内もクリスマスで、クリスマスの時間を一緒に過ごせるという、そういうシステムなわけです。
云うまでもなく、シビアなシステムです。そしてこれはシビアなぶんだけ、「リアリティ」というよりも、現実に即した「リアル」な感覚に近くなってきます。
ただ、このリアルタイムモードではないモード(スキップモードという名前がついてます)では、NintendoDS本体のリアルタイム日付以外時間の流れは反映されず、たとえば10月にゲームを始めたら、ゲーム内での時間が何日経っても季節は秋のままです。
当然、デートスポットである映画館やホールなどでやっている映画やイベントの内容も変わりませんし、山はいつまで経っても紅葉ですし、海辺で水着姿の彼女が見たいと思ってもそれはできません(NintendoDS本体の時計を進めることで可能にはなりますが)。
つまり、これを本来の意味で「恋人シミュレーション」として楽しむならば、リアルタイムモードでないとその真価は発揮しきれません。
で、このリアルタイムモードは比較的よくできています。このときにこうしなければいけないとか、メールを送ったその返事が返ってくるのを待つ時間とか、そういうものが全部現実時間とリンクしているので、画面上でのゲームとしての感覚はもちろん、「明日はデートだから忘れないようにしなきゃ、楽しみだな」という、現実の生活の中にゲームが入ってくる感じになってきます。
つまり「実際に理想の彼女がいる生活」を、現実世界で体験できるという、ゲームを超えた楽しみ方が可能になっています。それはもはやゲームなのか、という疑問もあるにはありますが、ちょっと古い言葉で云うと一種の「バーチャル・リアリティ」でしょう。
これは非常に面白いのですが、これを読んだ多くの方が想像されたであろう通り、忙しい方やマイペースにゲームを楽しみたい方には向きません。
会社でゲーム機を開くわけにもいかないでしょうし(いやまあ、会社にもよりますが)、実際に彼女がいる人ならば、実際のデートの最中にこのゲームを起動して……というわけにもいきませんでしょう。
それさえクリアできれば、これは非常に面白いシステムです。先に「マイペースには楽しめない」という旨のことを書きましたが、そういうところを彼女との時間に取られるのもまた「リアリティ」なわけですから。
慣れるまではスキップモードで進行したほうがいいと思いますが、多少「作業」感が出てきたら、このリアルタイムモードで遊んでみるとまた新しい発見があると思います。
さらに、これは恋愛シミュレーションに限定しなければ特別に斬新というわけではないのですが、実際に音声で画面の女の子と会話ができる「ラブプラスモード」というのがあります。
NintendoDSのマイクに向かって、たとえば「おはよう」と云えば、NintendoDSのリアルタイム時間に応じてそれぞれその「おはよう」に対して反応してくれる、というようなシステムです。
基本的にはお遊びのモードなのですが、これによって女の子の好感度を上げることもできるので、ゲーム内でまったく無駄かと云えばそうではありません。
ただまあ、当然のことですが認識できる言葉の数というのは決まっているらしく、あんまり突飛な答えはもちろん、普通の答えでも想定外の反応が返ってくることは少なくありませんから、これの完成度が特別に高いというわけではありません。それがまた楽しくはあるのですが、そういう楽しさはまた本質とは別です。
会話のパターンもそんなに多くなく、一回の会話で何度も同じ質問をかけられたりもするので、これが「実際に女の子と話している」感覚までいくにはまだまだこれから、という感じでしょうか。
また、これもまたこの作品の特徴のひとつとして、上述したように告白後には女の子の性格などが、主人公の接し方などによって明確に変わってくることが挙げられます。
性格「など」と書いたのは、これもまた上述したように、ここに髪型・服装なども入ってくるからで、要するにある程度女の子と付き合っていると、ディフォルトの状態から見た目も性格も別の、自分好みのキャラクタになるのです。
これも非常に面白いところで、まさに「自分と彼女の距離」や「間」を感じさせてくれるシステムであると云えますでしょう。
性格のバリエーションはそんなに多くないものの、髪型はもともとショートカットの子がロングヘアになったりもしますし、服装のバリエーションも豊富ですから、「彼女ががんばって自分の好みにあわせてくれている」というのを実感できると思います。
また、基本的に髪型や服装の変化はデート毎なので、次のデートで彼女はどんな格好で来るんだろう?という楽しみも出てくるのですね。
そしてもうひとつ、この作品には告白後にはゲームオーバーもエンディングもなく(告白後、エンディングムービーが流れますが、その後の彼女との生活に終わりはありません)、永遠にお付き合いが続きます。好感度が最低になってもフラれることはありませんし(もちろん態度は冷たくなりますが)、やろうと思えばいつまでもできるシステムです。
ただし、先述したように、ある程度慣れると「作業」になってしまいますから、これが生きてくるのはやはりリアルタイムモードでしょう。こちらはスキップモードに比べてはるかにリプレイアブルです。
ただまあ、ひとつ提案するのであれば、メッセージの表示速度はもうちょっと速くてもよかったかもしれません。特に、メッセージを送るにはタッチペンでメッセージウインドウ内をタッチしなければならないので、これが結構煩わしかったりします。
また、それに関連して、可能であればボタンでの操作も受け付けてくれると嬉しかったなあってとこでしょうか。
あとどうでもいいことですけども、わたしの持っているNintendoDSは最初期型なのですが、これが重さがアンバランスで縦持ちに向きません。これはもうどうしようもありませんが。
<音楽>
ハードの制約上なのか歌はありませんが、声はモブキャラも含めてフル音声。この声がまたすごく絶妙で、キャラクタの魅力をつけるのに一役買っています。
微妙な間や台詞などもそうですし、性格変化時における微妙なトーンの変化、デートのときの「微妙に嬉しい」「微妙に恥ずかしい」というその「微妙」を表現するところは、もはや声なくしてこの作品は成り立たないと云っても過言ではないかもしれません。
3人ともそのへんはまったく文句はないのですが、中でも姉ヶ崎寧々の声付けが絶妙で、トーンの変化や喜び方など細かいところが声だけで伝わってきます。これはもう、純粋に凄いとしか云いようがありません。
尤も、これは声質の問題もあるのだとは思いますが、これほどキャラクタのイメージとしっくりくる声というのもなかなかないのではないかなあという気がします。
唯一、名前の呼びかけのトーンパターンが少ない(あるいは一種類しかない?)のか、会話の中に名前が組み込まれた場合や下校時に出会ったときなど、呼ばれるトーンにちょっと違和感があるときがあります。仕方がないのかもしれませんが、せっかく名前を呼んでくれるシステムなのに、これはちょっと惜しいところかもしれません。
反面、その声の印象が強すぎて、音楽はあまり印象に残らない、というのが正直なところ。夏のテーマとか、じっくりそれだけで聴いてみると結構いい曲ではあるのですが。
<総合>
メーカーとしては、この作品を「コミュニケーションゲーム」と位置づけています。
システムの項目に書いたような「リアルタイムモード」なんてのは、その思想そのものはそれこそこの手のジャンルに興味がある人であれば多かれ少なかれ考え付くアイデアであるとは思います。
が、それをここまでの完成度で実際に作ってしまい、結果として「女の子とのコミュニケーション」がより楽しめるように作られているあたりがこの作品の凄いところでしょう。
既に何度も名前を出していますが、かつて同じコナミから発売され、今でも恋愛シミュレーションゲームのスタディモデルになっている『ときめきメモリアル』とはアプローチの仕方が真逆です。
あれにももちろんキャラクタの魅力はありましたが、それは強烈とも云える個性付けとホットなユーザによる味付けによって後から付随したところが大きく、純粋にゲームとしての巧みさがまず表に出たものでした。だからこそ、それまでギャルゲーというジャンルに興味のなかったゲーマーたちを巻き込んでムーブメントになったのでしょう。
対して、この『ラブプラス』は、上にも書いたように、ゲームとしては多少の斬新さはあるものの面白みはさほどありません。非連続のイベントを繋げることで物語を無限に想像させる手法は『ときめきメモリアル』と同一ですが、純粋なゲームとしての作りは『ときめきメモリアル』には及びません。
また、この手の作品として考えると、恋愛対象の女の子が3人というのはパソコンのアダルトゲームと比較しても少ない部類に入るでしょう。
やはりポイントは、この作品のコンセプトである「コミュニケーションゲーム」という方向性です。
この作品についてよく評価されている「告白後も話が続く」とか「告白後が本番」というのは、ここを読みに来ていただいているような方々であれば多くの方が御存知の通り、アダルトゲームの世界ではさほど珍しいものではありません。
それは、アダルトゲームで描かなければならないセックスという行為が、純愛モノと呼ばれるジャンルにおいては恋人同士になったあとにするものであるという不文律があるからというのもあるのでしょうが、いずれにしてもこれ自体は云われているほど珍しいコンセプトではなかったはずです。
ただし、告白後の物語の起承転結を追っていくのではなく、告白後の女の子とのコミュニケーションのみが目的となる作品というのは、今までありそうでなかったコンセプトでした。否、あったのかもしれませんが、作りこみが甘く「コミュニケーション」と呼べるほどにシステムや台詞回しなどが昇華されていなかっただけなのかもしれません。
そこを、徹底的に「恋人になった後を描く」ことを追求したこの作品は、今まで「恋愛シミュレーション」と呼ばれていたものが実は「告白シミュレーション」であり、「恋愛」の様子を描いた本当の「恋愛シミュレーション」たりえたのだと思います。
また、もうひとつ、従来の恋愛シミュレーションゲームというのがどうしても「一人でやるもの」であったのに対し、これは複数の人が集まっても楽しめる、という可能性を切り拓いたという意味でも大きなものだと思います。
ゲームの本筋とは別なので「システム」の項目では省きましたが、この作品では、自分の「彼女」と他人の「彼女」を、通信機能によって会話させることができます。
もちろん同じキャラクタ同士になることもありますが、上述の通り性格・服装・髪型などはそのプレイヤの接し方によって大きく変わりますから、「外見も性格もまったくおなじキャラが話している」ということにはよほど偶然が重ならない限りなりえません。
たったこれだけのことなのですが、まさに自分の好みになってくれている「自慢の彼女」が、他人の「自慢の彼女」と自分について話をしてくれるというのは、従来の「最初から最後まで一人でプレイする」ユーザのスタイルではまったくありえなかったものです。
冒頭の「コミュニケーション」というのは、もちろん作品内のキャラクタとの「コミュニケーション」なのでしょうけれども、こういったプレイヤ同士の「コミュニケーション」もまた楽しめるところは非常に大きなものです。
また、アダルトゲームに慣れた身には、告白後の最上級の愛情表現がキスというのに違和感を覚えないではないですが、ある意味でこれはこれでひとつの理想の恋愛のカタチではありますでしょう。そういうのを匂わせない、キスが最上級の恋愛表現であるというそのへんがまた、理想に思い描く高校生の恋愛というものに対するリアリティを生んでいるのかなという気がします。
この作品、そういうあらゆる面において、生々しさのない、思い描く理想の恋愛への「リアリティ」を見事に表現した名作と云ってよいのではないでしょうか。
リアルタイムモードでのプレイは難しくても、スキップモードでもそのいろんな意味での新しさや楽しさ、キャラクタの魅力の片鱗は十分に味わえますので、「いまさら恋愛シミュレーションもなあ」という向きの方も是非一度触れてみてください。
2009/10/15
2009/10/19 若干修正
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