ということで、まああれですよ、この吹けば飛ぶようなサイトも、振り返ってみればもう14年とかやってるわけですよね。
　14年ってなにげなく書いてますけどね、コレはコレですごいことでして、なんせあたしがはじめてウェブ上にうんち虫みたいな文章を書いてた頃に生まれた赤ん坊が、今頃セミロングの巫女さんになってる計算ですからね、なんかもうそりゃ年もとるわけだとため息のひとつもこぼしたくなるわけです。ていうかことによっては、年齢的にはあたしに14歳セミロングの巫女さんな子どもがいたっておかしくない。童貞ですけど。
　大学に入って、大学のなんだかいろんなことに絶望しつつあったころ、授業かなんかでインターネットに出会って、世の中にはこんなに面白いもんがあるのか！と感動して貯金を切り崩してPC-9801からWindows95の動くFMVに買い換え、とにかく何かを書きたくて仕方がなかった当時、HTMLの本を買いこんでページを作成して矢鱈滅鱈にWEBサイトを作っていたわけなんですけど、こんな感じの日記っぽい……日記？日記かコレ？まあいいや、そういうのはそれから２年後くらいから書き始めているようでした。
　ようでした、ってなんでそんな他人事みたいな書き方をしているのかと云いますと、なんとなくハードディスクの中を整理しようと思い立ちまして、バックアップディレクトリを見てみたらなんかこう昔の文章が出てきましてですね、これがもうなんせ10年以上前の自分の文章ですからね、到底自分では自分のモノだとは思えないような文章なわけですよ。ていうか、自分が書いたとは思いたくないような代物なわけです。
　なんせあれですよ、今じゃこういうところでは絶対使わない（笑）とか入りまくってるし、なんかそのときやってるゲームのキャラクタがいかに可愛いかを熱弁してるし、なによりも当時この手のサイトで流行ってた「フォントサイズとフォントカラー替え」をしまくってるわけです。顔文字を使ってないのが唯一の救いだな。
　この「フォントサイズとフォントカラー替え」については、不思議なことに当時ほかにテキストサイトを見ていたわけではないので、とか書いたところでこのテキストサイトという響きも微妙に懐かしいですけどそれはともかく、別にどこかのサイトを真似したというわけではなく、ある意味なんかあたしの中で自然発生的にやり出したことなんで（もちろんテキストサイトの歴史的にそういう手法があたしが元祖というわけではありません。念のため）、まだあたしの中での精神的被害は少ないんですが、それでも今見るとなんだかゲンナリするわけですね。なんかこうすごく残念なものを見たような思い。
　ま、人は誰しもそういう黒歴史的な側面があるのはこれはもう仕方がないといえば仕方がないのですが、それでもこう、やたらとはっちゃけている自分の姿を見ると、なんだかもう心の中のモヤモヤがすごい勢いで広がっていくような気になるわけです。
　尤も、今書いているこの文章だって、10年後のあたしが見たらまたゲンナリする可能性は十二分にあるのであんまり迂闊なこと書いてもアレなんですけどもね。だってあれですよ、ことによっては十年後にはなんかすごいマニアの人がたまたまいて結婚なんかしちゃって子どもがいたりするかもしれないわけですよ、そこへきてやれ童貞だなんだと楽しそうにはしゃいでるこの様子は痛々しいに違いないわけです。はしゃいでないけどな。
　でもですね、それを踏まえたうえでも、このなんだ、インターネットというものがまだマイナーなものから次第にメジャーなものに移り変わろうとしているこの時期の浮かれぽんち具合というのは、なんかもう流行り廃りとかそういうレベルではないところでこれはちょっと違うんじゃないかと思わずにはいられない。雑誌とか見ると「マルチメディア」とか「インターネットが普及したらマスメディアはすべて潰れる」なんてことが真面目に云われてた時期ですからね、ちゃんちゃらおかしいってなもんです。
　いやまあそういう大局的な見地はともかく、なんだろうな、それでもまあ、いつのまにかこういう体裁の文章へ変わっていくわけなんですけど、それはきっといろんな人に影響を受けてるんだと思うんですよ。
　初期の頃のあたしの文章なんかはもう当時（今もですけど）大尊敬していた鴻上尚史さんの文章になりたいという叫びが聞こえてくるようですし、そこから徐々にやや軽めのトーンに変換していこうと田中哲也弥さんあたりの文体に影響を受けてはじめているのが見て取れるわけで、そう考えるときっと今書いているコレも誰かの影響を受けてるんでしょうけどもね、そういうのってリアルタイムでいると気が付かないわけですね。
　ただこの昔から大変評判のよろしくない、まったく改行せずにひとつの文章をだらだら続けるというこの癖はもう誰かの影響とかいうわけではなく、というかこんな見づらい文体の作家さんなどいるはずないわけでして、まあなんですか、悪しき習慣ですか。悪しきとか云うなよ寂しいだろ。
　ただ、スタイル的な問題というかそういうところについては、こう「ここでもう一切合財文字は大きくしないし色も変えないし（笑）も使わない！」って決めたというわけではなさそうで、段階的にというか、徐々に使わなくなっていっているようです。
　このあたりになんとなく心境の変化を窺えないではないのですが、概ねそういう感じのはっちゃけたスタイルからこの今の世の中にモノ申す落ち着いた大人の社会派エッセイに変わった時期というのはほぼ一致しており、どうやらこの時期になにかあったな、というのをおぼろげに感じることができるわけですけどそれはともかく、なんか面白いのがあればこの時期の文章から適当に再録してお茶を濁そうとも思ったんですけどこんなもんでお茶を濁したらお茶が泥水みたいになりそうな代物ばっかりでしてもうなんともはやなわけですけど。いい加減人間なんてハタチ近くなったら成長しないもんだと思われがちですけど、精神的には確かにある程度成長してるわけですよコレが。あたしだけかもしれませんが。
　まあね、別に（笑）とかフォント替えが悪いと云ってるわけではないのですよ。そりゃね、こんなものに絶対的に正しい間違ってるなんてないわけですからね、好きにやったらよろしい。
　でもね、でもですよ、あたしなんかあと一ヵ月でもう34ですよ、もう四捨五入したら30歳って云える最後の年ですよ、そこへ来てだ、赤い字フォントサイズ７でうんこちんこはやっぱりちょっとどうかみたいなことになりかねないじゃないですか。このサイトを見ている14歳セミロングの巫女さんが意を決して告白しようと思ってたときにそんなん見たら百年の恋も冷めるじゃないですか。あとそもそもサイトの中全体をスタイルシート仕様に変えちゃったからフォントタグのサイズ指定使うのやだし。
　まあ、そういうスタイル的なことをさしおいても、中身についてもずいぶん変わったなあと思うのは、昔のソレはまだそれでも日記っぽいところがあって、日記っても自分のやったエロゲーの話が８割というお前どんだけ寂しいんだというようなアレなんですけど、今はそういう日記めいたものってほとんど書かないですからね、旅行へ行った時くらいですか。しかもこの旅行記が、またこうなんだろうな、特に盛り上がるところもなく淡々と行った場所を書くだもんで頗る評判が悪いというもうどうしたらよいやらなワケですよ。
　そもそもそれを書いていた当時から、有名人なわけでもない、イラストが描けるわけでもない、染色体にYが入ってる等悪条件が重なり、つまるところただのおっさんの日記なんぞ読みたいかと云われたらたぶん多くの人には興味がないことだろうというようなことは概ね理解していたつもりだったので別にそれ自体はいいんですけど、それなら何を書いたらいいんだという自問自答が始まり、それならもう好きなこと書いてやれというやけくそからこういうことになっておるわけでして、まあなんだ、ぶっちゃけどうしようもないよねコレ。
　そのなんてんでしょうね、ここに今日はこんなエロゲーをやりましたみたいなものを書かなくなったのは、ゲームをやらなくなったからというわけではなくて、こうゲームレビューと完全に切り離したからというのもあるんでしょうけど、またこのゲームレビューと云うやつもほんとうに読んでる人がどれくらいいるのかと不安になるくらい書いてもびっくりするほど外部からの反応がない代物でして、まあね、確かに人が書いたゲームの感想の感想を書けってのも難しい話でしょうからそれは仕方ないんでしょうけどね、なかなかこれも難しいところだなあ、というのはあるわけです。
　あと、買い物ひとつとっても、大学生のころはもう何買うにしたって必死じゃないですか。時給1200円という破格のアルバイトをしていたので割はよかったんですが、それでも毎日入れるわけじゃなかったですからね、多い月で自由に使える金は30000円くらいですよ。
　もうね、こんなもの何買うにしたって必死じゃないですか。新しいパソコン買おうなんて思ったら一年貯金するとかそういう生活ですよ。そりゃね、ひとつの買い物がでかくてでかくて、思わずここに書きたくもなるってもんですよ。
　それがどうだ、会社入って働き始めてみて、いやまあ最初の会社は吃驚するくらい給料安かったんでアレですけど、転職してみたらもう時間はないけど金は溜まるというそういう生活で、しかも童貞だから風俗とかには行かないわ、結婚できないから自分ひとりが食えればいいだけだわ、忙しくて細かいことに金使えないわで、まあ給料そんなに高くはないけどいちおう溜まるわけですよね。
　だからもうある程度の、昔なら一年貯金していたようなモノでも今はその場即金だったりクレジットカードの一括払いで買えちゃうし、まあなんだ、買い物ひとつでも昔のような感動はないわけですよね。
　しかしそれにしても、途中でいきなり童貞カミングアウトが始まり、それ以来いつかは「あたしはもう童貞じゃないよ！ 大人の階段を登ったよ！」という告白をしてみんなから総叩き、という日が来ると信じて疑っていなかったわけなんですけど、いやもうアレですね、びっくりするくらいそういう機会が来ないですね。もうまるっきり14年間にわたってそういうのが続いているというのはこれはもうある意味で凄いのかもしれない。
　だからもうアレだ、ここが大きく変わるとすれば、それはもう彼女ができたときだな。そうしたらきっともうお笑い要素のいっさいないいちゃいちゃ日記を見せつけてやろうと思いますので覚悟してください。
　できませんけどね。