01/21「理解論」

 ということで、ある日ふとどうでもいいことに気がつく瞬間ってあるじゃないですか。
 なんだろうな、こう別にずっとわからなかったことをずっと考えていてわかる、というのはこれはある意味当たり前のことで、たぶんフェルマーの定理の証明とかできた人はそういうあれだと思うんですよ。
 でもそういうことじゃなくて、もっとこうなんてかな、別にそのことを考えていたわけではないのに、そのことに気づくというのは、ある意味それを考えていてそれに気づくことよりもはるかに衝撃が大きいよなあとこう思うわけです。
 先日、今日はイカフライが半額で残ってればいいなあ、などと金持ちならではの庶民とはちょっとレベルが違う悩みなどに思いを馳せつつ、最近アニメが面白かったから買ってはあったけど読んでなかった『はなまる幼稚園』を読みつつ優雅に都営新宿線で帰宅していた時のことですけども、なんかですね、隣に座ってるやつのヘッドホンから音が漏れてるわけですよ。
 まあ、それはそれでいいんですけど、それがまたどっかで聴いたことがある曲なんですよね。どっかで聴いたことがあるけど思い出せない。
 こういうときってほんとにもうむずむずして、もう『はなまる幼稚園』どこじゃないわけですよ。せっかく山本先生の水着姿とか出ててもうそっちに集中したいのに、これなんの曲だ、というのでいっぱいいっぱいになったわけです。
 そんなこんなで10分くらいずーっとそんなことを考えていて、その間『はなまる幼稚園』のページをまったくめくらないで考えていたわけで、その光景をもし見てる人がいたらこの人どんだけ山本先生の水着姿が好きなんだろう気持ち悪いと思われていたに違いないんですけどそれはともかく、ふと思い出したんですね。
 それが、京野ことみさんの『NOW!』という曲だったんですよ。
 いやこれ自体は別に有名な曲ではないので別に知らなくてもいいんですけど、まあそのなんだ、そういうアイドルみたいなのがすごくブームだった頃の一人で、今では女優さんになられている京野さんがデビューしたすぐくらいの時に出した曲です。
 で、それを思い出して、ああそうか、『NOW!』か、懐かしいなあなんて思った瞬間に、頭の中をすぱーんと駆け巡るものがあったんですよね。
 Twitterは結構気軽と云うか、あまり物事考えなくていいのでくだらないこと時々書いてるんですけど、あれやってる人ならわかると思うんですけど、流れてくるツイートの中に「〜なう」という語尾のメッセージがあるじゃないですか。
 なんかこうなんだ、「喫茶店なう」とか「昼食なう」とか「別れた人に会った別れた渋谷で会った別れた時とおんなじ雨の夜だったなう」とか、まあそういうなんだ、行く場所や出来事+「なう」なんだな、というのは漠然とわかっていたわけです。最後のはよくわかりませんけども。そんなツイート流れてきたことないし。
 ただその意味が全くわからなくて、こうなんてんですか、コロ助の「ナリ」とか、仙台弁の「りゅん」とか、そういう類のあれだと思ってたんですよ。特に意味がない定型語尾と云いますかそんなような。
 ところがですね、この京野ことみさんの『NOW!』を思い出した瞬間に、「NOW、ナウ!? そうか、NOW→なう、つまりTwitterの“なう”は、今現在こういうことをやっているのだ、こういうところにいるのだ、ということを示す言葉だったんだよ!」ということに気づいてしまったわけですよ。仙台弁じゃなかった。
 この瞬間はもう衝撃でしたね。なんかもうアカシックレコードを読み解いたみたいなそんな感じだったもの。なんか世の中すべてのことがわかった気がしたと云いますか、一瞬宇宙から地球を見下ろしているような感じになったね。『特攻の拓』より抜粋ですけど。
 まあたぶんみなさん気づいてなかったでしょうから、今これを読んで驚いている人もたくさんいると思うんですけどもね、そういうことなんですよ。すごいことですよこれは。なにとっくに気づいてたそうかそうか。今あたしのことバカだと思っただろ! あってる。
 でもまあそういうことってままあると思うんですよ。別になんの根拠もなく、ふとわかる瞬間って、思いだそうとしていたことが思い出せないあの瞬間よりもはるかに留飲が下がると云いますか、なんかもうすべてがわかったようなそんな感じになるじゃないですか。
 これはまだそういう連想が働いてわかったことなんでまだいいほうで、なんかもう別になんの脈絡もなく急にものごとがわかったりしますかからね、あの瞬間てもうまさに神が降りてるんじゃないかとこう思うわけですよ。
 でもなんかわかんないですけど、世紀の大発見とかってたいていそういうことだと思うんですよ。なんかわかんないですけどもさ、ニュートンがリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見したとか云いますけど、あれそういうことじゃないと思うんですよね。なんかこうリンゴが落ちるのをなんとなくぼさっと見てて、そのあとなんかわかんないですけど近所のコンビニで唐揚げ弁当かなんか買ってレジで1000円札を出した瞬間に「あああれ万有引力だ!」みたいなことだと思うんですよ。
 結局のところ、あたしは脳医学とか専門じゃないだもんで詳しいことはわからないんですけどね、なんかこう気づく瞬間って、なにかをきっかけにすることももちろんあるとは思うんですが、それと同時になんの脈絡もないことをなんの脈絡もなく気づくということも多々あると思うんですね。頭の片隅に引っ掛かっていたことが、なんかの拍子でぽろっと外れて落ちる瞬間と云いますか、そういうのあると思うんですよ。度忘れの逆ですよね。度思い出しですよ。
 ただそれは、前者の「なんとなくなんだろうと思っていたことがわかる」のに比べて留飲が下がる度合いはすごく低くなると思うんですよね。
 なんかこうあれですね、昔の話でさらにある程度やってる人じゃないとわからない話で申し訳ないんですけど、C言語でプログラムを書くとき、頭に「#include <stdio.h>」というのを書くんですが、高校生くらいのときにこれを本だけで勉強してると、この#include〜は「呪文のようなものなので意味はともかく必ず書いてください」みたいなことしか書いてないわけです。
 で、まあ、画面に「うんこ」とか表示させてげらげら笑うだけの練習プログラムを組むときにもこれを書くわけなんですけど、なんせこっちは「呪文みたいなもの」として説明されてますしそういう認識ですからね、そんなものまったく気にもしなかったんですけども、なんとなく漠然とそれを「studio」と読んでいて、いや読んでいたわけではないんだけどそう認識してたってか、難しいなこの感覚伝わるかなあ。
 とにかくそういうあれで、「最初にスタジオhをインクルードして」とか云ってましたし、打つ時も「シャープインクルードかっこスタジオh」とか頭の中で再生してましたし、今でもこれを打つ時は(いやまあそんな機会めったにないですけど)やっぱりスタジオhって云ってますし、現に上の文章を打つ時にも頭の中では「スタジオh」って再生されてたわけなんですけど、上にも書いたように「これは呪文」なので、「なんでスタジオなのかなあ」とか思わないわけですよ。だってウイザードリィとかやりながら「どうしてロクトフェイトはロクトフェイトなのかなあ」とか思わないじゃないですか。
 で、別に遊び半分でやってたわけだもんでC言語もQuick Basicほどにはマスターできないまま中途半端に終わって数年が経って、なんかこうラーメン屋で注文した塩ラーメンを待ってるとかなんかもう手持無沙汰なときですよね、別になんの脈絡もなくそれを思い出して、「あ、そうかあれはスタジオじゃなく“Standard I/O”の略なのか」とふと気付いたんですよ。別に気付いたところで塩ラーメンが早く出てくることもなかったし、出てきた塩ラーメンが旨くなることもなかったし、いまさらなんで別によかったんですけど。
 感覚としてはあれですよね、よく「喉の奥に小骨が刺さってそれが取れないのが気持ち悪い」とか云いますけど、あれで云うならば、「喉の奥に小骨が刺さってるんだけど刺さってたことに気づかなくてそれがなんかの拍子に抜けた」みたいな感じだと思うんですよね。だからこう「長年わからなかったことがすっきりした」みたいなこともないし、「ああそうか」くらいの感覚なんですよ。
 この「特に疑問でもなかったことの正体がわかった」というのは、不思議なことにわからなかったことがわかったにも関わらずちっとも嬉しくない、という大きな特徴があるわけでして、そういう意味ではニュートンの万有引力とかそういうのと一緒にするのは大変に失礼な気もするのですがそれはともかく、こういうことままあるんですよ。
 特に最近、いわゆるネットで使われているジャーゴン系にそういうのが多くて、なんてかな、匿名掲示板から派生してブログとか個人サイトとかで使われる系統の言葉なんてほとんど意味わかんないけど特に意味を理解しようという気にもならないわけで、最近こう仕事の絡みもあって「誰得」という言葉をすごく見かけるんですけど、これもまたなんかこうそういう語尾と云うかそういうあれだと思っててまったく気にもしてなかったんですが、これもなんか風呂に入ってるときにふと「ああそうかあれは“誰にとって得なんだ”みたいなそういうあれか」ということに気づいたりして、別に嬉しくもないけどなるほどと思ったりするわけです。みんな日本語は正しく使おうぜ。
 まあそういうなんてんですか、世の中まだまだわからないことがいっぱいあるよね、というそういう哲学的なお話でした。うそですけど。

<近況報告>
  • でも最近意味を知った言葉の中で、使ってる人間がばかっぽく見えるネット言葉ベスト3は「情弱」「マスゴミ」「〜厨」だと思います。
  • 今日、秋葉原の某マーズで『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の主題歌CDを買ったら、「これを50ポイント集めると某マーズのスタッフジャンパーが貰える」という触れ込みの「1P」と書かれたレシートを貰ったんですけどね。
  • まず50回の買い物でペラペラのジャンパー一枚は交換レートとして極端に高いのではないかというのが一点。それからそもそも根本的にあの緑色のジャンパーを欲しい人がいるのかという疑問が一点。
  • いやきっと欲しいんでしょうみんな。某の穴の黄色いエプロンと同じくらい欲しいくらいに違いない。あたしのファッションセンスがおかしいんですよきっとそうに決まってる。だってあたしは今だってブラジャーにパンティ一丁だしな。
  • あ、いつのまにか300,000カウントを超えておりました。来ていただいたすべての方にありがとうございます。
  • > おれけっとスペシャル期待してます
     意外かもしれないけど、あれ結構仕込みに手間と時間がかかるんだぜ……。
    > 虚しい…何だこの虚無感は…
     とりあえずあたしから云えることはひとつ! もやしを食え!
    > 私にとってはもう10年近く、あなたは名脇役ですよ
     そう云っていただけると非常にありがたい話ではあります。なんかこうずっと7番だけど必要な打者になりたいよね。
    > くそーカウンタあと6だった。今晩いきますかね。30万ヒットおめでとうございます。
     まあでもジャストをとらなくてよかったのかもしれませんよ。取るとあたしの彼女になれる権利がついてきちゃいますし。女性をあたしに紹介することもできます。
    > このサイトを14年間も知らなかったなんて/くやしい/でも(略)/ビクンビクン/あ、30万ヒットおめでとうございます。
     大丈夫だいじょうぶ。読んでると彼女はできないわ株式は上場廃止になるわえらい騒ぎだから。
    > マイピク登録してもよかですか?
     よかですよ。ところでマイピクってなんですか。
    > 今29995ですね
     ああその数字はあたしの彼女になれる権利が貰える特別賞ですね。また、あなたが男性の場合はあなたの知り合いの女性をあたしに紹介することもできます。
    > 1:10 300000を踏んだのは僕のようです。 リニューアルも楽しみにしています。
     おめでとうございます。特賞としてあたしの彼女になれる権利が貰えます。また、あなたが男性の場合はあなたの知り合いの女性をあたしに紹介することもできます。
    > 書き込んだら昇進していくBBS持ってたなぁ…懐かしい黒歴史
     あったあった。「部長」とか名前の横に出るの。あれ考えた人は結構凄いと思うけど今考えるとよくわからない。まだあのシステム使ってるところもあるんだろうなあきっと。
    > 友人にラジオ(?)紹介されました。なかなか興味深かったので聞いてみてください。/http://www.******-u.com/sityou/index.php?fld11=292(検索で紛らわしくないために一部隠してます。高御註)
     個人的なことを云わせて貰うと、この方(がどなたなのかは知りませんが)の仰ってることというのは、すごく理想論な気がします。実際はそうかもしれないけどそういう風にはいかないんだよ、というような。特にあたしの今の仕事に当てはめてみるとそんな感じがしました。
    > どう考えても上手くなっている
    > 師匠絵うまくなってませんか
    > あれ、絵巧くなってません?
    > ゆいにゃん絵うまいじゃないですか
    君たち! みんなして大人をからかうのもいい加減にしたまえ! ……いやもうほんとありがとうございます。そしてすみません。
    > TOP絵について。高御さんの勇気に乾杯。
    うん、みんなに「みんなも絵を描いていいんだYO!」って云う希望を与えたかったんだ……。
    > やっぱり上手くなくて安心しました
    いやそれはもう。ぐうの音も出ません。自慢じゃないですけどあたしは絵に関しては極端に謙虚です。
    > トップ絵が換わってる!
    > 4〜5年ぶりにTOP絵が変わった!!
    しかしこの手のサイトでトップの絵が変わったことでこんなに騒ぎになるというのはある意味凄いと思いました。どれだけさぼってたかの証みたいなもんですねすみません。
    > 最近暇なんですか!?
    いやぜんぜん。むしろどんどん仕事が詰まってきてる気がしますよ? ある意味これはストレスの発散なのですよ。


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