10/11「学園祭論」

 ということで、学園祭シーズンだそうです。なんだか微妙に半月ほど過ぎている気がしないでもないですが、そこはそれ、微妙に時流とズレているのがある意味ここの醍醐味であるというようなあれでとっていたたければ。思いついたときに思いついたこと無計画に書き散らすからこういうことになるんだよ高御君。
 もうここでは何度も書いてきているテーマではありますが、学園祭ってあれじゃないですか、あのお祭り感というか、そういうのってすごいいいものだなあと思うんですよ。なんかこうその日一日が特別な日なような感覚というか、ちょうどムラでかつて行われていた「お祭り」がそうであるように、ケの日を乗り越えた自分たちを鼓舞する意味も込めてその日をハレの日として楽しむ、まさにお祭り感覚だと思うんです。
 あたしは高校時代を男子校で過ごしたので、学園祭というのはあるにはあったのですがよく語られるようなお花畑な様相はまるでなく、いちおう演劇部で部長という立場だったので、学園祭は唯一の発表場所であるという楽しさはあったものの、女の子とどうこうみたいな楽しさはまるでなかったわけです。
 なんてかな、学園祭の花ってやっぱりそういうところじゃないですか。クラスの女の子と二人で前の日の準備で遅くまで残ってどきどきしたり、なんかの拍子でいっしょに回ることになってお化け屋敷にどきどきしたり、あんまり美味しくないたこ焼きを二人で食べてどきどきしたり、自分のクラスの出し物であるところの喫茶店でその子がいつもの制服姿とは違う可愛い服みたいなのを着てるのを見てどきどきしたり、そういうものだと思うんです。
 そこへ来て男子校ですからね、そんなもの幻想もいいところというか、昔お化け屋敷の暗闇で女の子を襲った奴がいたからという理由でお化け屋敷は出展禁止だし、そもそもクラスに女の子がいないし、最終的には科学部が水圧でドラム缶へこませる実験に失敗してドラム缶が爆発してニュースペーパー沙汰ですからね、学園祭のそういう夢と百八十度真逆なところにあったわけですよ。錦城高校の皆さんお元気ですか。僕は疲れ気味です。人生に。
 大学時代なんて一年生のときに一回やっただけで、二年目以降はなんか学生運動団体がなんとかでそもそも中止になりましたからね、縁がないにもほどがある。学生運動て。60年代かお前は。早稲田大学の皆さんお元気ですか。僕は疲れ気味です。人生に。
 そういう意味でなんてかな、あたしはこう基本的に学園祭に縁がなかったわけですよ。
 当たり前ですけど、社会人になると学園祭とかありませんからね、その思いが成就することは一生ないわけで、それだからこそ必要以上に学園祭というものに憧れざるをえないわけです。
 なんせ夢にまで見ますからただごとじゃありません。いい加減31にもなって学園祭の夢を見ているというのもどうかと思いますが別に調整して見ているわけではないのでこればかりはどうにもなりません。あと2ヶ月で32だよどうすんだよコレ。このままだとほんとにマハマンとか使えるようになっちまうぞマジで。
 まあその、全体的に学園祭っていいなあと思うところはあるんですが、大局的にこれは二つの見地に分けられるのではないかと思うのです。
 まず前日までの準備。これはあれですよ、お祭りの準備と云うのはなんとなくわくわくするもので、あたしの男子校ライフの中でさえちょっとわくわくしてましたからね、そういうものなのでしょう。
 演劇部だったあたしの場合ですが、なんかこう一所懸命練習したりとか、照明とか音響のセットを組んだりとか小道具作ったりとか、そういう時間ってみんなで何かを作ってるなあという感じがして当日より楽しかったりするじゃないですか。今でこそいらん子街道を愛川欽也もびっくりのデコトラで大爆走中なあたしですけども、当時は部員が少なかったこともあって一人一人がちゃんと意味を持った上で忙しく、そういう意味での充実感はあったものです。
 そこへなんだろうな、普段は学校にいられない時間まで残ってたりするところにちょっと気になる女の子がいたりすると、これはきっとドキドキするんだろうなあとこう思うわけです。
 それであれですよね、普段だったら絶対に帰らないような遅い時間に通学路を歩いたりして、みんないっしょだったはずなのにいつの間にか帰り道がいっしょだった女の子と二人だけになってみたりして、なんか話すこともなくなって「明日楽しみだよな」なんて云ったりして「うん。みんながんばったからね、きっと成功するよ」「そうだな……あんまりクラス全体で一つのことをするのってないもんな」「わたしも明日はがんばるよ」なんてガッツポーズをしてみせる様子に「お前アガリ症だからなあ。大丈夫か?」云うとちょっと心配そうに「うーん……絶対に大丈夫、とは云えないかも……」「……おいおい」「でも大丈夫だよ、だから一所懸命練習したんだもん」「……そうか。そうだよな」照れ屋で引っ込み思案なコイツにはきつかっただろうなと思っていたら小さな声で「……応援してくれたからね」「え?」「え? あ、う、ううん、なんでもない!」「……なんだよ、もう」しばらくの間があってからちょっとぶっきらぼうに「お前さ」「うん、なに?」「明日、回る予定とかあるのか」「学園祭を?ううん、ないよ」「ないのかよ……」「えへー、出し物のことで頭がいっぱいで、そんなこと考えてもなかった。どうしようかな」「……それならさ」「うん?」「それならさ、いっしょに回らないか、明日」「……え?」「いや、俺もそういう予定ないからさ、一緒に回らないかなって。イヤならいいけどさ」「ぜ、ぜんぜんイヤじゃない! ぜんぜんイヤじゃないよ!」「……そか」「でもいいの? わたしなんかで」「いいも何も、俺が誘ったんだ、馬鹿」「……そうだけど、でも」「いいんだっての。がんばってるお前にご褒美だ、クレープくらいならおごってやる。あんまり美味くないだろうけどな」「……うん。ありがと」恥ずかしそうに、けど嬉しそうにまみが微笑んだ。まみちゃんだったのか超久しぶりだな! っていうか長いよ一文が!
 まあとにかくそんなようなこともあるかもしれないじゃないですか。なにないと仰る何を根拠にそんなことを。
 とにかくそういうような祭りに向けての準備と云うのはなんとなく気分が高揚するもので、まずそれが文化祭の醍醐味としてはひとつあるじゃないですか。
 そしてもうひとつがたぶんあれだと思うんですよ、当日限りのいろいろ燃え上がる青春的な何かだと思うんです。
 ちょっと前に『涼宮ハルヒの憂鬱』っていうアニメがあったじゃないですか。あれの中に文化祭のシーンが出てくるんですけど、そこでなんかこうバンドに臨時で入って歌を歌うみたいなシーンがあったんですよ。もう見てない人置いてけぼりの説明で申し訳ないですけども別にそこは本質じゃないので大丈夫です。なにがだ。
 そこで流れる曲が『Lost my music』という曲で、これがなんというか実にバンドっぽい曲で妙に好きなんです。単にいい曲だ云々なら別にいいんですけど、これのアマチュアバンドっぽさが凄くいい。
 それを聴いてるうちに、なんかこうそういうのもいいよなあと思うわけです。
 別にバンドをやりたいと思ったことはあんまりありませんが、なんかそういうハレの舞台で思いっきり何かやる、というのはすごくいいんじゃないかなとこう思うのですよ。
 まあ、あたしがリアルタイムで高校生とかなら、この『Lost my music』をコピーしたバンドを作ろうとかちょっとアレな感じの、『スレイヤーズ』で読書感想文を書くのと近しいような行為に走りかねませんが、きっとそれはそれで楽しいと思うのです。後から思い出してどうだかは知りませんが。っていうか実際にいそうだよなそういう高校生。
 そういう意味では極端に色気がない以外はあたしの高校時代だって似たようなもんではあるのですが、まあでも基本的にそういう感覚ですよね、ああいうのは素敵だよなあとこう思うわけです。
 鑑みるに、ああいう場って学園祭以外になかなかないと思うんですよ。
 もちろん実際に芸能人になりましたとか云う人ならぜんぜん話は別ですけど、学校を卒業しちゃうと、そういうハレの場で思いっきり何かをやる機会ってないじゃないですか。普段は会社でもお味噌でなんかもううだつのあがらないあたしのようなのが祭りの日にはじけるというようなそういうあれはもう二度とないわけですよ。そもそも学園祭に値するハレの場がないから当然っちゃ当然なんですが。大きい会社だと社内運動会とかあるみたいですけどなんかそれはそれでアレだよな。「部長そこでレシーブを!いやお見事!」とかそういうあれか。きついなそれ。あたしの中の大企業イメージはなんかおかしい。
 それを考えれば、あれはあれでなかなかに貴重な機会だったわけでして、バンドでも演劇でもなんでもいいんですけど、そのために練習してそこで発表するというのは、これはこれでひとつのカタルシスだと思うのです。
 人間やっぱりどこかに主人公になりたいと思うところがあって、それを叶えてくれるのがこういう瞬間なんじゃないかなと思うわけですが、それを考えるとただアレか、あたしの中で何かが鬱積してるだけなんじゃないかという気もしてきた。なんだそうかそうか。
 とにかく、学園祭もしくはそれに類するものは学生時代にしか味わえないわけで、味わえる皆さんは大切にしましょうとそういうあれでどうだ。いやどうだって云われても。
 しかしまああれだ。何気なく書いた文章だけど、一年前と云ってることも結論も変わってないってすごいよなある意味。まるで進歩してないってことかそうかそうか。

<近況報告>
  • なんか久しぶりにリアルタイムでアニメをよく見てる昨今。なんでかは自分でもよくわからん。疲れてるからじゃね?
  • 『CLANNAD』『かんなぎ』は素直に面白いかな。『かんなぎ』を褒めるのはいろんな意味でアレなところもありますが。
  • 『とらドラ!』が次点。一話目ではどうかと思ったけど二話目になって面白くなってきたんで先に期待。30歳独身が可愛いな!
  • 『今日の5の2』と『あかね色に染まる坂』にはもうちょっとがんばれ賞を。
  • 『あかね色……』は原作が好きだっただけにがっかりさ! やっぱりもともと声が付いてるものは基本的に声変えたらいけないと思うんだよ。あたしはあの声の湊が好きだったんだよ! あたしの湊を返せ!返せよう!
  • > さだまさしさんではベタですが関白宣言と関白失脚が好きです。更新頑張ってください。
     ありがとうございます。『失脚』のほうは結構密かな名曲ですよね。最後の「がんばれみんながんばれ」のところは涙なしには聴けないね。カラオケで歌うとすごく気持ちいいよ。長いからみんなに嫌がられるけど。
    > お話のヤツは杉みき子『あの坂をのぼれば』ですね。考えてみれば同じ市だから教科書同じなわけです。
     同じ市!? どこ中よ!? 特攻の拓。「あの丘」じゃなくて「坂」でしたか。そう云われてみればそうなような気もしてきた。なんか妙にインパクトがある文章だったんだろうなあ。でも国語の教科書に載ってる文章ってなんか妙に覚えてるのあるよね。
    > 仕事が辛いですが、ここの更新を楽しみにしております。どうかあまり気を落とさずに。
     ありがとうございます。みんな仕事はつらいのだなあ。ここの更新が多いときは精神が不安定になってるときだという説もありなかなか難しいところですな。
    > 長渕もいける口ですか?
     『Captain of the ship』とか大好きです。カラオケじゃ絶対に歌えませんが。13分てこんなん入れたら袋叩きだな。ヨーソロー。
    > どうしてセンセーがモテないのか不思議です。
     顔とか性格とか生き方とか全部ひっくるめて不細工だからじゃないでしょうか。


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