6/1 「結婚論」

 ということで、結婚ですよね結婚。やっぱりさ、結婚は人生の墓場だなんて云う人もいますけども、やっぱり結婚だと思うんですよ。
 と云うかですね、この年になりますとですね、否応無しにまわりがどんどん結婚していくわけでして、別にあせっちゃいないんだけどもなんだかなあみたいな気持ちになっているところにおいて、不細工仲間で勝手に俺サイドだと思ってた人間まで「今度結婚するんすよ」なんてことをいきなり云ってきたりすることもままあってもうどうしたらよいやらなわけですよ。今まで散々モテないみたいな話しといて彼女が出来たすっとばしていきなり結婚てないだろお前それ。
 それであれなんだよ、例外なくなんだよお前結婚するのかよみたいなことを云うと「お前にも嫁の友達紹介するからさ」みたいなことを云うわけなんですけども一人も紹介してもらってないってこれはいったいどういうことなんだい大将。やっぱりやめたとか三十にもなって童貞のくせに14才巫女さんなんて云ってるような奴に誰を紹介しろというのかというようなあれかい。君の云っていることは正しい。正しいけど間違っている。一人くらいほんとに紹介してくれる人がいてもいいと思うのに本気で誰もいないというのがこれがすごいな。社交辞令にもほどがある。そんな社交辞令なんか要らんわ。
 いやさ、世の中恐ろしいことに男性のほうが何パーセントか多いらしいんですよ。
 と云うことはどう云うことかというとですね、毎年数パーセントの男があぶれてるということなんですよ。そのスパイラルに嵌るとあたしみたいなのが出来上がるわけですね。あれだもんな、今まで一人も女の子と付き合ったことがないとか、そういうのいまだに嘘だと思ってる人いるみたいだもんな。これがマジだから困ってるんだって俺もさ。嘘だったらこんな性格捻じ曲がってないって。
 なんつうかなあ、結婚したいよね一回くらい。家に帰るとお嫁さんが待ってる生活ってすっごいいいじゃないですか。今なんかあれだもの、一人で誰もいない部屋に向かって「ただいま」って云ってテーブルに座って「おかえり」って自分で云う生活ですからね。もうやってることがびんちょうタンと変わりない。真っ暗な部屋を見るのはもう嫌なんだよもうさあ。
 それがどうだ、結婚してて御覧なさいよ。ドア開けたらそこにはお嫁さんがパジャマ姿で退屈そうにテレビなんか見てるわけですよ。それでもって、「ただいま」なんて云うとさ、満面の笑顔で「おかえりなさい!」なんて云って抱きついてきたりするわけじゃないですか。まあ頭からはシャンプーのほのかないい香りですよね。そりゃね、一日の疲れなんか吹っ飛んじゃいますよ。しかもあれだ、新婚さんですからね、「わたしたち、結婚したんだよね?」なんてことを聴いてきたりするわけですよ。もうなんかいっしょにいることに慣れてないからさ、テレビなんかも並んで黙って見てたりして、手が触れ合っただけでどきどきしてもうなんかはじめてのデートのときみたいになってるのね。そういう生活。おかえりのある生活。これね。よくお付き合いのする相手と結婚相手は違うよなんて云うけどそういうもんじゃないわけ。そういう初々しさがいいわけじゃないですかこれはさ。最初にはじめてであったときのことなんかを思い出してどきどきする感じっていうかさ、ビールかなにかを飲めもしないのに二人で飲みながら黙ってテレビを見て手なんか繋いじゃってるあの一瞬ですよ。いややったことないけど。
 やっぱり潤いのある生活ってのはそういうのなわけですよ。真っ暗な部屋に帰ってきて帰ってまずすることは米をといでさらに冷蔵庫を空けたら空っぽでああどうしようかなあなんて思ってて悩んでても仕方ないから仕方なくラーメンなんか茹でてああ今日はちょっと豪華にラーメンライスだなあなんて云ってる場合じゃない。ちっとも潤ってない。
 だいたいその「はじめてのデート」もまだ一度もやったことがないような状況で結婚生活を想像するというのはなんかもういくつ障壁を乗り越えてのことだよと思わないではないんですけども、いや皆さんならわかってくれるに違いないち信じてるよ僕は。なにもう結婚してるけどそんなもんじゃない?知るかそんなもの。
 今日から六月なわけですけども、六月と云えばジューンブライドらしく結婚式場なんかすごい大賑わいだそうでもうなんだかあれですな、こちらサイドとしてはやさぐれるばかりですな。バレンタインデーみたいなもんで、ジューンブライドなんて閑散期だった結婚式場の陰謀なんだよくらいのことを云ってもいいくらいの勢いではあるんですけども、まあ皆さん幸せそうなこと。きっとまた今年も結婚式とか出なきゃいけないんだろうなあと思うともうなんかめでたいやらくやしいやらであれですね実にね。どうでもいいけど余興とか喋りとか頼むのやめてくれ考えるの面倒だから。せめて頼んだからには女の子紹介してくれ。
 しかし難しいよなあ。結婚って実はすごく難しいことじゃないかと思うんですよ。だってあなたあれですよ、まず女の子と知り合ってそういう仲にならなきゃいけないんだから。この時点であたしなんか予選落ちだもの。その上でこの人なら一生付き添っていけると思ってレッツゴーですからね、こんな敷居の高いことが普通に行われていることが驚きですよね。世の中晩婚が増えているというか若くして結婚する人が減っているらしいのでそれのせいでまだこの年でもぎりぎりでそんなにおかしく見られないのが唯一の救いっちゃ救いではあるけどいずれにしてもゴールが見えないから困ったもんさ。
 でもあんまり結婚式とかはやりたいくないんだよなこれが。そういうのは興味ないわけ。なんかすごい祭り上げられてるみたいで嫌じゃないですかああいうの。いやまあ実際祭りあげられてるわけなんですけどもさ。なんか子芝居みたいでどうも。
 ああでもあれだ、なんかカッコイイことができるといいよね。前にも書いたけど、お嫁さんがピアノかなんか弾いて、お婿さんがギターかなんかを弾いてセッションを見せてくれるみたいなのがあってさ、ああいうのはいいよな。なんかこう「初めての共同作業です」なんてケーキ切ったりとかそういうのはもうおなかいっぱいですよって感じですけど、ああいうのはなんか演出としてすっごいいいじゃない。そういうのできればなあ。だからなんで篳篥なんか習ってるのかなああたしは。
 しかしあれだな、このままだとあたし結婚もできないのと違うかなあと思ったらなんか本格的に暗くなってきた。なんかもう出口のない迷宮だなこれは。

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