05/04 「古都リベンジのおはなし」

 とは云うものの、ゴールデンウイークなわけですよ。ゴールデンウイークと云えばこれはもうどこかに旅行しないと勿体無いと思ってしまうのはもうある意味休みなく働くのが美徳であるとされる日本人の悲しい性でして、そんなことばっかり云ってるからチェーンソー一発で勝てるんだよお前はよ、みたいなそんなことにもなり、でもチェーンソーなしで戦うとあいつ結構強いんだよね。こないだ久しぶりにやってみてそう思いました。なんか一発でこっちの体力持ってく技とかあってさあ。もう話がどんどん逸れていく上に何の話かわかる人は二十代後半のみと云うですね。
 そういうあれなのでゴールデンウイークの一番正しい過ごし方は「家で寝ている」ことだと思うのですけれども、今回に関してはゴールデンウイークの中日である二日に急遽休みが取れたので、この日ならどこも混まないだろうからせめて人並みにゴールデンウイークっぽく過ごすのもいいかなあみたいなそんなようなあれでちょっと旅行っぽいところに行ってきました。
 ってもさ、どこへ行くかは結構迷ったんですよね。「一仕事終わった後は神社に参拝する」というのが恒なので、それを考えれば伊勢あたりなんだけど伊勢だけ行ってもなんかゴールデンウイークって感じがしないし、とか云ってるあたりでもう完璧に感覚が麻痺してるわけなんだけれどもそれはともかくそういうあれで、じゃあ早朝に伊勢へ行って神宮へ参拝、直後にそのまま前回の奈良をリベンジしようじゃないかとこう思ったわけです。前回は奈良の南側しか行けなかったしな。いやしかしゴールデンウイークに旅行に行くなんて、何年か前の祝日も祭日もなかった仕事の日からは考えも及ばなかったよな。
 深夜三時出発。ゴールデンウイーク中日だからもしかしたら混んでるかなあとも思ったんですが、東名高速はものすごく快適に流れてました。ゴールデンウイークといっても平日だしこんなもんでしょう。その代わりトラックが多かったけどな。
 一度、東京インター入ったところでカーナビがおかしくなったので、それを直すためにパーキングエリアに入った以外は猛烈なノンストップ。一度も止まることなく伊勢インターまで走りぬきましたね。あんまり眠気とかもなかったな不思議なことに。
 神宮はそんなに混んでるでもなく、いつもの感じ。到着が八時とちょっと早い時間だったこともあってむしろ空いてました。外宮だといつ行ってもわりとこんな感じなんですけども、内宮でもこんな感じ。1月29日の初詣のときはこんなだった場所も、ほぼ同じアングルでこんなです。雨降ってたしな。しかも雷とか鳴ってたし。
 九時をちょっと回ったところで伊勢を出発、伊勢道に復帰。実に伊勢の滞在時間が一時間ちょっとという、果たしてほんとにそれでいいのかというようなあれですが、伊勢道途中のサービスエリアで一時間ほど仮眠を取ってから、伊勢道→名阪国道経由で天理、天理から奈良公園へ。一時くらいには着いてた感じで、全体的に流れは良かったですね。そりゃそうか平日だし。
 奈良公園なんて来るのは修学旅行のとき以来なので実に15年近くぶりなわけですが、なんせ奈良と云うのはこうなんだ修学旅行気分を盛り上げてくれるものでして、それに関しては3月26日のここで散々触れたのでそれはともかくそういうあれなわけですよ。実際に修学旅行っていうか遠足の子どもとかいっぱいいたしな。
 奈良公園もたぶんゴールデンウイークさなかにはほんとにえらい混雑になるんだろうなあという感じでして、実際平日だったこの日も人の出は多く、駐車場もいっぱいになってるところも多数。しかし一回1000円って豪快な値段だよな。流石だぜ奈良県。
 奈良公園といえば鹿なわけで、こんなにいたっけ?ってくらいの鹿。もうな、すっごいの。ああ昔修学旅行で来た時はこの鹿ではしゃいだっけなあ。鹿せんべいとか自分で食ってみたりしてな。女の子と二人で鹿にせんべいあげたり撫でたりとかそういうあれをやってみたいなあとか思ってたもんさ。平安時代に前世でいっしょだった女の子とそういうあれがあって「かわいい♥」なんて云う彼女のいその光景を見て昔のことを思い出したりしたいなあとそういうあれですよね。『久遠の絆』より抜粋でございますけども。またか。
 まあこういうところではあれなんで、とりあえず鹿にじゃれ付いたり撫でたりしてきましたよ。一人で。もうな、やってるうちに死にたくなった。そうかこういうところは一人で来る場所じゃないのだなそうかそうか。
 とりあえず春日大社へ。タケミカヅチを中心に祀られる、全国の春日神社の総本宮となる歴史ある神社です。境内はえらく広くて、見て回るだけでも結構時間がかかる上に全体的に山なので疲れてる身にはちょっときつい感じ。藤の花がちょうど綺麗でなかなか見所も多いです。
 ここであれですよ、巫女さんがですね、ちょうどこう外に立ってなんか仕事してたんですね。そしたらですね、強い風が吹いてきまして、こうなんだ、袴がですね、ぶわっとめくれたんですね。もうな、すっごいアレですよ。いやまあね、巫女装束だからその袴がめくれたところで何が見えるってわけじゃあないんですよ。白衣が見えるだけでそれでおパンツ様がですねこう見えちゃいましたみたいなそういうあれじゃないわけ。いやまあそのへんは皆さん巫女装束の一回や二回着たことがあると思うのでわかると思いますけどねいねえよそんな奴は。必死に慌ててに袴を押さえる仕草がすっごい可愛かった。もうこうなると重症です。
 というようなあれがあって、さらにこう散策してたらですね、カップルがいたんですよ。いやそりゃそれくらいいるだろうってなもんなんですけども、そのカップルの会話が何気にきこえてきましてね。なんかこう境内の巫女さんとか見ながらでしょうなあ、女のほうが「あれ(巫女装束のこと)可愛いよね」ってのに対して男が「お前が着ても似合うんじゃない?ちょっと想像しちゃった」「馬鹿、想像するなー」みたいなあれですっごいきゃいきゃい楽しそうに話してるの。なんだあれ。なんだあの幸せいっぱいなまさに理想のカップルですみたいな会話。羨ましくなんかちっとも。青春の馬鹿野郎。地球なんか滅びちゃえ。
 しかしね、春日大社はこうそれ自体は実に風光明媚なところではあるんだけれども、反面なんて云うかな、ものすごい商売っけっていうかそういうのを感じるわけさ。なんせあれだもの、そこここでここの宮司さんが書いたっていう本とか売ってたり、なんか境内の中に入るのにお金を取られたり(お寺だと多いけど神社だと非常にレアですね)、祝詞のCDを売ってみたり、「売れるものは売っちゃうぜ」的なあれがすっごくあるわけですよ。いいんですけどね別にね。
 で、修学旅行と云えばやっぱり大仏様です。これを見ずに修学旅行は語れません。昔に行ったときも、やっぱりなんだかんだで大仏様の迫力に気圧されたりはした記憶があります。
 で、見てきましたよ東大寺大仏殿。もうね、まわり遠足の子どもだらけでえらいことになってた。思ってたよりは小さくて、なんかあたしの中で大きさがものすごく誇張されてた感じはしたな。
 さて、そこからどうしようと思ったんですけども、平城京跡に行きたかったんですよ。でも、なんせ無計画に来てるだもんでどうにも行き方がわからないわけです。これがまたどこの駅からも微妙に離れてる感じがするんだよね。いや、車で来てるんだから車で行けばいいんだろうけど駐車場があるかどうかわからないし、何より千円も払ってるのでこれで出すのはちと惜しいと。
 そうなれば徒歩ですよ。歩きましたね奈良公園から平城京跡まで。すっげえ遠かった。なんだあれ。しかも国道沿いにぜんぜん「平城京跡」の文字が出てこないから不安になるんだよこれが。結局一時間くらい歩いたのとちがうか。「新大宮」っていう駅から近くに見えたんだけどこの駅からまた歩くんだこれが。まったく前回の反省が活かされてません。しかも行ってみれば駐車場なんか無料であるし。なんだあれ。
 で、平城京跡。なんか写真が暗いのはカメラのせいでほんとはすっごいいい天気でした。しかも平日昼間、人がぜんぜんいなくていい感じですよこれ。だーっと緑が広がる中に道がある遊歩道と公園という感じで、近くに住んでたら気晴らしに来るのにちょうどいいなあ、という感じ。平城京の古き雅な時代に思いをはせるも良し、静かで良いところでしたねここはほんとに。疲れとか吹き飛んだもの。
 そのそばの資料館も見てみました。全体的にお金を取る傾向にある奈良の中では珍しくここは無料で見られます。終わるのが四時でちょっと早いのが難点ですがね。平城京関連の復元資料がメインなので古代そのままを感じるにはちょっとツライ部分もないわけではないんですが、この中にある「人形(ひとがた)」はマジで怖いぞ。特に「呪いの人形」は夢に出ること請け合い。写真撮ってこようと思って忘れてたくらい。いや別にそういうの信じてるわけじゃないけどさ、1300年も前の、誰かの誰かに対する怨みの形なわけじゃないですか、これ。そう考えると、この人形の顔とか結構本気で来るものがあります。
 で、この資料館から一番近い駅がどうやら新大宮から一つ行った西大寺という駅らしく、ここから電車に乗れば近鉄奈良駅まで行けてここなら春日大社駐車場まで歩いていける距離なんだそうです。よし、と思ったら平城京跡から西大寺まで十分くらい歩いたぞ。どこが最寄だ。
 近鉄電車に乗って近鉄奈良、そこから興福寺を通って春日大社まで徒歩二十分。もう歩くの飽きました。とりあえず屋台でイカ焼き買った。こればっかりだな俺。一人でイカ焼きかじってたらなんか死にたくなったよ。
 帰りは17時奈良公園出発、東名経由で帰宅。新宿を回って中央道で帰ろうと思ったら、ゴールデンウイークの渋滞が既に始まっててたいへんなことに。帰りの東名でも下りは深夜の0時に富士インターを先頭に30キロ渋滞とかになっててうひゃあとか思ってたら、新宿から中央道も大渋滞らしくて高井戸から小仏トンネルまでずっと混んでるとか云ってるの。もう信じられない。それならどっちでもいっしょだと思って下道使って帰ったら2時間かかったよ。
 最後のが一番疲れた。
 で、今回の感想としては。どうも奈良という都市の観光資源に対するアプローチがなんとなく見えてきた気がします。
 たとえば前回も書いたみたいに、ものすごい田舎のほうの神社で参拝とかであっても容赦なく500円とか取ってみたり、今回の春日大社については1000円とか取ってみたり、春日大社では喫茶店(?)とか経営したりCD売ってみたりと、奈良は全体的に観光だけでも結構お金がかかる町であるなあ、とこう思うのですよ。
 で、これが、並び記されることの多い京都との大きな違いだと思うのですよ。奈良と京都って観光地としての発展の仕方としては、似ているようで実は割と対極にある気がするのです。京都という街は過去の資産を過去にあった姿のまま残し、それを観光資源にしようとしているわけです。京都ホテルなんかの騒ぎはその象徴的なものでしょう。で、奈良は過去のものは過去のものでそこにあるけど、じゃあそこに現代を融合させるというか、過去と現代のせめぎあいの景色がそこにあるんじゃないかなあ、とこう思うのです。ちょうどこういう景色がすごく象徴的でしょう。ちょっとわかりにくいですが平城京跡のどまん中を近鉄電車が走り抜けているわけで、この景色なんかはまさに過去と現代の融合だという気がします。
 どちらが正しいとか、そういうことではないでしょう。観光資源に対するアプローチが違う、というそれだけの話でしょうし。観光旅行に行く立場としては負担が軽いのは京都のほうですが(過去の資産をそのまま残すと云うことは、そこに人の手を入れず、金銭的負担を強いないことに繋がるわけですから)、奈良のこういう風景もまたそれはそれで嫌いではないですし、何よりも地元で暮らす人々にとってはこちらのほうが圧倒的にありがたいでしょうから。
 しかしまだこれでも回りきれていない奈良。もう一度だな。

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