なりきりプリンセス -女になったボクを見て!-(ZERO)

項目シナリオシステム音楽総合
ポイント3−
シナリオ:
原画:
音声:
主題歌:

-安い、早い、普通-


<シナリオ>
 主人公は気弱な少年。新しく入った学園の入学式で、女の子と衝撃的な出会いをして一目惚れ。彼女の後を追いかけて演劇部に入部しようとするが、演劇部部長のたくらみにより部活動中は女の子として過ごすハメに……部員の女の子はみんな女装している彼をほんとうの女の子だと信じて疑わない。さて、彼の恋の行方は?
 とまあ、物語を説明するならこんな感じでしょうか。もう、ベッタベタです。朝はいきなり幼馴染の女の子が起こしに来るところからはじまってみたり、主人公が一目惚れした女の子との出会い方は出会い頭の激突でしかもそのときに女の子のパンツがちょっと見えてしまってどうしよう、なんていうお約束の塊。まぁ別にそれはそれでいいんですが、このへんからしてなんとなく微妙な脱力っぽさを感じずにはいられません。
 演劇部云々の話になってからようやくこの作品ならではの個性が出てきて、要するに「女装して、男だとバレないように過ごさなければならない」というドキドキが味わえる……のかなあと思ったのですがそんな気苦労まったくなし。そういう観点というのはほとんどなく、ナチュラルに状況を受け入れて女の子として部活に参加している主人公、というなんだかもうとんでもない展開になっていきます。設定自体に無理があるのはまあゲームだからという理由でおいておくとしても、その無理を納得に変えるような説得力も勢いもありません。作品前半はそれなりに主人公の戸惑いがあったりしてなかなか面白い展開なのですが、後半ではそれを主人公自身があまりにあたりまえに受け取っていて、なんだか楽しみどころが難しい感じはします。
 一つ一つのシナリオ自体はそんなに長くはありません。フルでやっても2時間くらいで終わりますでしょうか。長さが長さなので、びっくりするようなどんでん返しの展開があったりするでもなく、実に淡々とエンディングまで物語は進行していきます。主人公が女の子に惚れていく過程もあまりに急だし、その逆もまた叱然り。さらには状況が状況だけに「実はわたしは男なのです」と告白するシーンというのが必ずあるはずで、こういうところはどうするのかなあと思っていたのですが、これも特に説得力ある理由があるでもなく、「みんなにバレちゃいました。以上」的な展開であっさりしたものです。要するに普通の恋愛物語としてみた場合にも妙に走っていて脱力だし、かと云って女装云々を生かしたトンデモな展開になるのかというとこれがそうでもなく脱力というダブル脱力です。どうにも楽しみ方が微妙です。
 まあ、それならそれでエッチ方面にどかんと振ってあればいいのですが、これがそうでもないんですね。まあ考えてみれば、主人公は女の子の格好をしているわけで、なかなか毎日他の女の子とのエッチ三昧というわけにも行かないというのは理解できなくはないんですが、エッチ自体は極端に後半に固まっており、数も多くありません。内容もまあ普通のエッチシーンで非常に薄味。この手の系列の作品からするとなんとなく物足りなさを感じないではありません。
 ま、こういう軽い感じの、エッチなライトノベル感覚というのもこれはこれでアリだと思いますけどね。値段も安いし。

<CG>
 立ち絵に関してはなんとなく微妙にバランスが悪い気がします。首が長すぎるのか、頭が大きすぎるのか……一枚絵ではそんなに違和感を感じないので決してマズいという感じの絵ではないのですけども。まあ、全体的にはクセが強いわけでもなく、それほど好き嫌いに依存しないタイプの絵柄だとは思います。そういう意味では期待を裏切ることはたぶんありません。まあ、女の子を縛った絵が出て、次の絵になるといきなり縄が跡形もなくなくなっていたりするのはちょっとどうかと思いますが。

<システム>
 おなじみのビジュアルアーツシステム。アドベンチャーゲームにおいては不便もなく、スキップもそれなりに高速で、システムとしては完成されています。それなりに使いやすいんですが、特に目新しいところもありません。バグなどもとりあえずわたしの環境ではなし。良いんじゃないでしょうか。

 <音楽>
 ほとんど覚えてません。曲のパターンが何曲あったのかも記憶にないくらい。オープニングやエンディングに歌があるわけでもなく、個人的には音楽に関してはまあほんとにバックグラウンドかなあという感じでした。声に関しても、まあそれなり。みんな巧くてキャラクターのイメージとそれなりに一致したところにあるのですが、微妙にキャラクター同士が被っているせいで、この娘といえばこの声だと思い出すのがなかなか難しいのです。ゲーム中にキャストとして割り振られている分には結構いい感じなので、まあ「ボイス」としての役割はきっちり平均的に果たしていると云えますでしょう。

<総合>
 惜しいなあと思うのは、とにかくそのシチュエーションの微妙なところがあまり生かされていないところですね。うまくやれば普通のゲームとはまったく違った展開のシナリオにもなったはずなのですが、そのほとんどが非常にあっさりしすぎているのです。これはまあ、シナリオを楽しむよりもそのシチュエーションそのものを楽しむ作品なのかもしれません。絵はそこそこ綺麗だし、少なくとも前半部分はシチュエーションの生きた描写や展開になっていますので、あらすじなんかを読んで気になった人ならまあ買ってみても損はしないんではないかと思います。値段も安いし、コストパフォーマンスはそんなに悪くはないのではないでしょうか。ただ、過剰な期待は禁物です。力を抜いて挑みましょう。

2002/12/14
2002/12/15 修正


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