MOON LIGHT (Clear)

項目シナリオシステム音楽総合
ポイント
シナリオ:
原画:
音声:
主題歌:

 新規参入メーカー「Clear」の処女作。廃校を舞台にするという、設定としてはかなり新しい試みであると言えます。その雰囲気やパッケージから漂ってくる感触は明らかに「泣きゲー」のそれなので、モードをそちらにチェンジして望んだのですが、これがどうも肩透かしをくらったような感じでした。
 というのも、まず何よりも、シナリオに面白みがないのです。目新しい設定であるはずの「学校が廃校になる」というシチュエーションですが、これがまったくと言っていいほど生かされていません。ただ最初にそういうことがあったのだという事実が話されるだけで、「学校が廃校になる」というのを「卒業」と置き換えても、これっぽっちも違和感のないシナリオが淡々と続きます。しかも、物凄くゲームとしてエンディングに向かうためのフラグがきついので、最初のうちはいいんですが、やっているうちに飽きてきてしまうという致命的な欠点を抱えています。
 音楽とか絵はかなりいい感じなんですよ。ゲームの雰囲気にもまったく違和感がなく収まっていて、これに関してはまったく文句をつけるところがありません。特に絵は独特の透明感を持っているので、これがシナリオがシナリオだと収まりが悪くなってしまうんですが、ゲーム全体に漂う雰囲気が、その違和感を見事に消し去っています。
 ところが、それに肝心のシナリオがついていっていません。ビジュアルノベルは「本」ですから、シナリオがダメだと全てが崩れ去ってしまいます。そのはずなのに、先が読めてしまうシナリオと、「泣かせよう」という雰囲気とが見事に不協和音を奏で、へんにちぐはぐな感じを作り出してしまっているのです。ひらたくいえば、ゲームそのものが、非常に「単調になってしまっている」ということでしょうか。文章のテンポはかなりいいんですが。

 これも「勿体無い」ゲームですね。次回作でもっと練りこんで作ってくれれば、面白い作品ができあがってくるメーカーなのではないかと。そういう意味では期待できるという感じはします。

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