カナリア 〜この想いを歌に乗せて〜 (フロントウイング)
項目 | シナリオ | 絵 | システム | 音楽 | 総合 |
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ポイント | 4 | 3 | 2 | 4 | 6+ |
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シナリオ:
原画:
音声:
主題歌:
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-青春リダイレクトゲーム-
田舎の学園を舞台に、バンドをテーマに繰り広げられる物語。もうとにかくその青春時代の謳歌っぷりが羨ましくて仕方が無くなる一本です。田舎に引っ越してきた主人公が、新しく入学した学校で軽音楽部に入って……という、こんな青春を送ることができたらあたしもこんなひんまがった性格にならずに済んだのになあなどと思わず呟いてしまうようなストーリーが展開されます。
まずシナリオですが。これはもうかなり秀逸。話そのものも、基本に忠実ながら吃驚するような展開も待っていて驚かされますが、それ以上に文章のテンポのよさに惹かれますね。会話そのものを楽しめる感じ、とでも云うのでしょうか。この「会話が楽しい」というのは実は重要で、これがうまくいくかどうかでその作品がその人にとってどういう印象を残すかが決定されます。悪戯好きの妹キャラなんてのは設定としてはベタベタで、そういうところに気を使わない作品ならば、どうでもいい会話を無理矢理押し込んだことで発生する引っ掛かりが気になったりするのですが、この作品にはそれがありません。寧ろそれが快感ですらあります。中盤で少し中だるみしてしまいますが。
絵は独特の雰囲気のアニメ絵です。立ち絵はそんなにパターンは多くありませんが、上記のテンポのよさが幸いしてそんなに気になりません。ですが、これが一枚絵になると話は別で、なぜかこの作品、一枚絵になると絵の雰囲気が変わります。いや、雰囲気というか、線が変わるのです。立ち絵のほうがクセのないあっさりした線で構成されているのに対して、一枚絵は線が太くてへんにクセがあります。別に上手いとか下手だとかそういうあれがあるわけではないので、これを許容できるかどうかはまあ人それぞれなのでしょうが。
システムは……正直、ボロボロです。このシステムがこの作品においてすべての足を引っ張っていると云っても過言ではありません。まずは妙に遅い上、CTRLキーを押しっぱなしにしないと効かないメッセージスキップ。いい話なのに、続けて次をやろうという気を激しく減退させてくれます。なんせメッセージスキップ中でもちゃんとメッセージが読めるのですからその遅さたるや何をかいわんや、というやつですね。
さらに問題なのは、ゲームの根幹になるマップ移動システムです。要するに画面にどかーんとでかい地図を表示して、その上でいくつか行けるポイントをクリックするとそこに移動、そこで誰かに会うとなんらかのイベントが起きるというシステムですね。しかも、行った先に誰もいなくてもそこでその日の行動は終わってしまいます。
このシステムは、わかりやすさや見栄えのよさなどのメリットを持つ反面、「フラグが経つまでセーブロードの繰り返しの単純作業になってしまう」という重大な欠陥を持っています。つまり、行った先に誰もいなかったり、はたまた狙っているキャラクターと違うキャラクターが出てきた場合、則データをロードして狙っているキャラが出るまでやりなおさなくてはならないわけですね。たとえそのキャラが出てこなくても、別のキャラでそのキャラのシナリオが進むことも考えられますから、結局行く事が出来るポイントを全部潰す必要があるわけです。これが、「なんだ、俺は今ゲームをやっているんだ」ということを意識させてしまい、物語の足を引っ張ってしまいます。「システムが物語の邪魔をしている」典型的な例でしょう。これがスキップが高速で、失敗しても最初から同じシナリオをやりなおすのが苦痛でなければまだいいのですが、上述したようにスキップは激遅ですから、セーブロードの繰り返しをやらざるをえません。これが苦痛になってしまいます。
んで、音楽は、歌ものに関しては「音楽が売り」を謳っているだけのことはあり、かなりの出来です。それぞれのキャラにエンディングソングが用意されていたりと豪華ですし、特にオープニングの「カナリア」は本当に名曲です。ただ、反面、ゲーム中の曲に関してはあまり印象に残りませんでしたが。むしろどうせならば、作中にももっと歌を詰め込んでしまってもよかったのかな、という気がしないでもありません。
ただ、最後まで、青春時代よ再びという叫びにうまく返しているのもまた事実。システムと演出面がちょっと弱いのが勿体無いですが、そのシナリオの小気味よさが気持ちのいい作品でした。
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