いただきじゃんがりあん(すたじおみりす

 通称「宇宙麻雀」なる次元を超越したルールを発明したことで、「麻雀ゲームの常識を打ち破った」と、いろんな意味でその名を轟かせた伝説の麻雀ゲームです。ある意味、麻雀ゲーム史上最もホットな麻雀ゲームのひとつでしょう。あまりにホットすぎて多くの人は大火傷を負ったようですが。

 まず、画面写真がサイドにしかない珍しい形式のパッケージの蓋の部分を見ると、こんなことが書いてあります。

 (前略)オレの牌が光って唸る!
 少女の背中が轟き叫ぶ!
 愛あり笑いありエッチあり!
 ファミレス麻雀アドベンチャーここに見参!


 いきなりフルブーストって感じですが、意味はさっぱりわかりません。
 いや、まあキャッチコピーなんてのはどれもこんなもんですからそれもよしとしましょう。案外、勢いだけで意味なんかありませんみたいなキャッチフレーズなんて世の中にはいくらでもあります。
 それにこの「愛あり笑いあり」の部分は看板に偽りなしです。違う意味でですがね。
 緊張に震える手をなんとか落ち着かせながらパッケージを開けます。いまどきでは滅多に見ることもなくなったフロッピーディスクと一枚のペら紙が出てきたのはとりあえず気にしないことにして、まずはマニュアルを見ます。
 インストールとかゲームの起動の仕方なんてのは別にいいです。こんなもんは概ねどんなゲームでも一緒ですから。キャラクタ紹介もまあよいでしょう。しかし麻雀ゲームのマニュアルのお約束として、これにも麻雀についての説明があるんですが、これが結構いい感じにツボをついた文章です。
「同じ種類の牌の1〜9で三つの順子を作る役(一気通貫。じゃあ「123」「234」「789」の順子三つでもいいのか?)」「暗刻で刻子を四つ揃えた役(四暗刻。暗刻は問答無用で刻子なので「暗刻で刻子じゃないもの」は存在しませんね)」「カンした時に不足分を王牌の山からツモってきた牌であがるとつく役(嶺上開花。別に嶺上牌は「不足分」ではないと思うぞ)」等、決して間違ってはいないにしても、なんかちょっとニュアンスが、という説明がイカしてます。
 え?突込みが細かい?そんな重箱の隅をつつくようなことを云っても仕方が無いじゃないか、と?
 いやいや。これが「麻雀の根本的なルールを説明する」という役割を担っている以上、ここはもう厳格すぎるくらい厳格でなくてはいけないはずなのです。だって、麻雀のルールを知らない初心者がこれを見てゲームをやったと仮定しましょう。最初の「123」「234」「789」でシュンツを作ったと。それなのに一通にならないじゃないか、ということが起きかねない。これではちょっとまずいわけです。
 もっともこのゲームにおいては、そんなストイックな役の追及なんかこれっぽっちも意味ないんですがね。
 CDは二枚組で、一枚は「インストールディスク」、もう一枚が「ミュージックディスク」になっていて、きっとインストールにはインストールディスクを入れてゲーム中にはミュージックディスクを使うのだなと想像がつきますので、インストールディスクを入れてみます。マニュアルには書いてありませんが。
 このへんは常識で判断しろ、というのが男らしさでしょう。そんなマニュアルあってもなくても同じじゃないか、というようなことは思うだけにしておきます。
 インストールが終って、CDをミュージックディスクに入れ替えて早速起動。
 趣味の問題もあるでしょうが絵はかなりかわいいですね。人物は勿論好みですし背景とかもきっちり描かれているし。
 音声も出ますがこれも結構上手いです。男らしくオフにはできませんが。
 あと、文章のテンポもいい感じです。男らしくスキップできませんが。
 ウインドウの右端の×ボタンをクリックすると「終了しますか?」ともなにも聞かれず問答無用で終るのも男らしいです。
 そんなこんなでストーリー部分が終わり、いよいよメイン部分の麻雀です。
 麻雀ゲームなのだから、多少その他がどうかなあというような出来であっても、このパートさえよく出来ていればわたしはなにも文句は云いません。ま、システムの都合で二人打ちなのは仕方がないでしょう。いま売られてるような麻雀ゲームなんて、安物でも四人打ちのモードも搭載されてるよなあ、なんて云うのは、それはあなた野暮というものです。
 ここでこれからこのゲームをはじめる人にひとつ注意。決してこのゲームでマウスを連打してはいけません。さもないとどんどん勝手にシーンが進んでいってしまいます。現にわたしもマウスを連打して何度有効な第一ツモを切ったことか。ついでにイカサマで、最初の手牌を交換するというのがあるのですが、これも一度選んだ牌はキャンセルできないので、連打は命取りになります。
 ついでに今日びの麻雀ゲームでは、1500円で売ってるようなやつでも鳴けるときやロンできる牌を相手が出したときは自動的にメニューがでて「ロン」とか「ポン」とか出るものですが、このゲームでは一切出ません。出たなと思ったら自分で右クリックしてメニューを出してやらねばならず、そのまま例えば勢いとかでマウスをクリックしてしまうとそれは見逃したことになってしまうのもきっと不親切とかではなくて初心者を鍛えようとしているのに違いありません。
 実際の麻雀じゃあそれを判断するのは自分自身ですからね。
 ツモれる牌の数が極端に少ないので流局が異常に多いのだって、初心者を鍛えようとしているのでしょう。きっと。
 最初は点数計算までこっちでやらないといけないんじゃないかとさえ思いましたがそれはさすがに向こうでやってくれました。ハイテクですね。このルールに慣れると、こんなことでも感動できます。
 まあ、そういう意味では非常に初心者に厳しく初心者でない人にも厳しいルールになっている当作品ではありますが、少数だとは思いますがこのゲームではじめて麻雀に触れたという人は他の人と実際に麻雀を打つ前にちょっと本を読むなりしたほうがいいと思います。
 え、これが脱衣麻雀だからかって?
 それもあります。脱衣麻雀というのは確かに相手のツモが異常に強かったりするのはごく当たり前で、ゲームセンターにあるやつなんかだと天和・国士無双のダブル役萬で100円入れてから30秒でゲームオーバーなんてのも少なくないですから。
 でもそれでもいちおう麻雀のルールに乗っ取っているわけですが、このゲームはコンピューターがとんでもない和了りをしてきます。たとえばリーチもなにもかかっていない状態で役無しの手でロンされるのは当然。そんなの当たり前すぎていちいち突っ込む気にもなれない感じ。ぶっちゃけこれくらいは覚悟の上で望んでくださいってなもんです。麻雀がわからない人にはなんのことだかさっぱりわからないと思いますのでたとえ話をしますと、野球の試合でいきなり相手がホームランゾーンにボールを投げ込んで「はいこっち一点ね」って云ってるようなもんだと思ってください。
 平たく云えば「むちゃくちゃ」ってことなんですが、どうもこの製作者は根本的に麻雀のルールを知らないか、あるいは知らないけども知らないなりに一所懸命麻雀の本を読みながら作ったのではないかなあというようなシーンも数多く用意されているのが特徴です。
 コンピュータ麻雀の特徴として「イカサマ技」というのがあって、このゲームでも例に漏れずそういうのを使ったりもできます。しかし、この必殺技としてドラ積み込み……つまり、配牌時にドラを自分の手配の中に多く入れるというインチキ技が使えるキャラがいるんですが、この技が発動するといきなりドラ表示牌と同じ牌をたくさん持ってきたりするというある意味で必殺(ただし死ぬのは自分)の技だったりしますし、かなりの確率で聴牌しているものをノーテンだと言い張ったりするのもやっぱりそんな雰囲気が漂っています。特に、カンをしてしまったらまず和了れないものとみて間違いないでしょう。このゲームオリジナルのルールブックいわく「不足分」が出るので持ってくる、その4つの牌をコーツとみなすという処理が極めて苦手なご様子です。いいんでしょうかこれで。
 しかしやはり何より衝撃的なのは「東・南・西・北・白・發・中」で順子になってるという事実でしょう。「東南西」で順子なのですな。「東東南南西西」なんて持ってれば一盃口です。楽しくて思わずうきうきしてきます。最高です。確かに初心者の頃はドラ表示牌がすなわちドラなのだと思ったりするし、白發中で順子になっているのかなあなどと考える時期はありますが、それを実践に持ち込んだゲームはわたしが見た中ではたぶんはじめてです。ルールまで捻じ曲げてよいのかどうかということに関してはこの際問わないことにしましょう。云うまでもなく「白發中」で手牌にあればそれはシュンツとみなされますので手牌の幅が広がりますね。ただしフリー雀荘とかではやんないほうがいいと思いますよ。ボコにされると思いますので。
 このゲーム、発売された時、あまりのバグの酷さに会社のホームページのBBSが物凄く荒れたそうで、まあなんだかなあというのもこれを実際に見れば頷けます。でもこれ、麻雀のルールをきちんと知っている人が穿った目でやれば楽しいこと請け合いです。というか、ほとんどギャグ以外のなにものでもありません。確かに「笑いあり」ですがこんなところで笑えるとは想像すらつきませんでした。これがまた「狙ってやってるわけではない」ところに思わず落涙ものです。

 よく見ると、マニュアルにはこうあります。
 「麻雀は14枚の手配をいかにそろえられるかという絵揃えゲームなのです。あまり難しく考えず、気軽に楽しんでくださいね」。そう、気軽に楽しめばこんなに楽しいゲームはありません。まあ、プレイヤーが気軽に楽しむのはともかくとして、果たして作り手が気軽に作っていいのかといえばこれは別問題だとも思うのですが。
 いちおうアップデートのフロッピーディスクは付属していますし、メーカーのホームページに最新版のアップデートプログラムが上がっているようなのですが、はっきり言ってこのゲームの真髄はアップデートしてしまったら伝わりません。もちろん本当に脱衣麻雀として遊ぶのならアップデートしないと話になりませんが、笑いたいのならアップデートしないでやるのがお勧めです。っていうか、アップデートしちゃったら普通につまらないだけのゲームなような気がするし。
 ま、アップデートしても完全には直らないらしいんですけどね。
 これ、そういう意味ではむちゃくちゃお勧めです。わたしはバグだらけで却って面白いという話を聞いてから興味を持ったタチなので、これに金を払う価値があるかどうかはその人の判断基準におまかせしますが、わたしはこれだけ笑わせてもらったのでもう満足です。いやほんとに。もちろん普通に遊びたい人のためにきっちりとゲームができるアップデート版をきちんと出した上で、ですよ。
 まあ、楽しみにしながら発売日に買ってしまった人はほんと気の毒だと思いますが。



11/20 追記

 ファンクションキーでアドベンチャーモードのスキップ、音声のオン・オフができるようです。研究不足でした。すんません。


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