○NISSAN GLORIA Gran Turismo

 レンタカーの無料チケットが余ってたんですが、それがもうすぐ切れることに気が付きまして、みすみす無駄にするのも勿体無いので何か乗ったことない車に乗ってみようということで。最初はフェアレディZを予約していたんですが、Zが既に予約済でアウトだということで、代理で出てきたのが同じクラスのこのY34グロリアのグランツーリスモでした。フェアレディZとこれが同じクラスだというのもなんだかよくわかんない話ではありますが。まあどうせほとんどタダみたいな値段で借りてるからなんでもいいんですが。
 この車、今じゃあ名前も消滅してしまってフーガになってますし、同じクラスにちゃんとフーガも入ってますから、これが出ることって滅多にないんでしょう(そうでなくても、レンタカーってあんまり高いクラス借りませんよね)。たぶん、フーガとかスカイラインとかの同クラスの車が全部出払っているとき、緊急避難的に出してくる車なんだと思うんです。なもんで傷だらけだしろくに洗車もされてなくて、なんだかちょっと可哀想な感じの車でした。
 思えば、幼稚園の頃にはじめて好きになった車は430セドリック・グロリアでした。そしてこれが名前としては最後のグロリアです。そういう意味では、狙ったわけではなかったものの結果的にはいい機会だったなと。ちなみに、この実車の年式は平成14年式のノンターボモデルのグランツーリスモだと思います。

ロードインプレッション

 なんというか、すべてにおいて旧世代の車だなあ、という印象は拭えません。もちろんメカニズム自体は進化してるんですが、コンセプトが昔のままなんですよね。昔ながらの高級車、っていう感じで。年式的にはうちのメルセデスより新しいはずなんですが、全体的にそれをまったく感じさせません。
 セドリックとグロリアは、日産自動車とプリンス自動車が合併したときからずっとまったく鏡のように同じモデルをラインナップする姉妹車でした。例えば、セドリックだけにあってグロリアにないモデル、というのは存在しなかったわけです(ジャックニクラウスバージョンなんていう限定車は除きます)。
 それが、このY34になって明確にキャラクターが分けられ、セドリックはどちらかといえばゆったりした「ブロアム」系、グロリアは走りに振った「グランツーリスモ」系という風になりました。同じグロリアグランツーリスモでも、V6ターボであるVQ30DETを搭載した「グランツーリスモ アルティマ」というモデルもありますが、これはノンターボのVQ30モデルです。セドリックよりも足回りなどがスポーティになっているのが特徴なんだそうです。
 なんですが、あまり振り回して遊ぶ、っていうのはできないかも。車重があるのもそうなんですが、それ以上にサスペンションがふわふわで粘ってくれないし、シートのホールド性も高くないのでコーナーを楽しむってのはちょっと無理そうな感じですね。
 高速道路での走行は比較的安定しています。パワステが軽自動車の電動パワステみたいな感触で妙に軽いのが気になりますが、余裕のあるエンジンパワーのおかげでかなり安定して走れます。ただ、ロードノイズはともかくエンジン音がかなり室内に響いてきますので、あまり「静かに走ってる」感じはしません。これはちょっと残念なところです。
 ワインディングでは「早く走る」のは苦手です。上にも書いたとおり、重い車重とサスペンションが仕事してなくて、限界は低め。マニュアルモードATとかで「スポーティに」走ることはできるので一応走っててなかなかに面白くはあるのですが、それで実際に攻めこんでいけるかというと話は別。トルクがあるのでコーナーからの立ち上がりは気持ちいいんですが、手前でかなり減速しないと不安になる感じがします。
 よって、タイトなコーナーが連続して出てくるようなところは苦手ですし、あまり「気持ちいい」とも思えません。これはまあ、車の性格を考えると仕方がないところもあるんですが。コーナーを攻める車ではなくて、高速道路や大きな国道などを気持ちよく走るための車だってことですね。このへんはE240とよく似ていますが、E240のほうが同じようなワインディングシチュエーションでも若干粘ってくれるというか、サスペンションがしっかり仕事をしてくれている印象は受けました。
 ただ、燃費のよさは一級品です。これだけ激しく遊んで加減速しても、リッター9キロを割らないのは立派だと云えるでしょう。これはこれで結構経済的な車ではあります。

 前から。いかにもな純日本的高級車という押し出しの強いデザインですが、個人的には結構気に入っていたりします。思うに、セドリック・グロリアという車は、歴代モデルを振り返ってみてもデザインに一定の方向性というかアイデンティティを持ってるんじゃないかなと思うんですよ。モデルチェンジをしても、ああ、セドグロだってわかる感じの。そういうのを含めて、デザインとしては嫌いじゃないです。
 ただ、いわゆる「VIPカー」みたいな路線からはちょっと外れてますし、ライバルのクラウンとか見ても高級車というカテゴリがデザイン含めて欧州車的な味付けになってることを考えると、このモデルでセドリック・グロリアという名前がなくなってしまったのもむべなるかな、という気もします。そういえば、フーガとかはかなりデザインも欧州車チックですよね。
 ヘッドライトはHIDが入ってます。HIDの車をこんなに長い間乗ったのははじめてだったんですが、明るいとかってよりも照射範囲が広いのがいいですね。見てくれがかっこいいというのもありますが。
 リヤは反対に非常に挑戦的な(という言葉でいいのかわかりませんが)デザインです。顔立ちに比べるとずいぶんイメージが違いますが、これはこれでなかなかまとまってるんではないでしょうか。それでも、ほのかに日本的なイメージを残しているのが不思議と云えば不思議です。それだけまとまりのあるデザインだということなのかもしれませんが。
 これだとわかりませんが、わずかにハイデッキになっているため、実は後ろの視認性はあまりよくありません。もともと全体的に大型のセダンなので後ろの見切りはさほどいいわけではなく、バックのときなどには結構気を使います。
 サイドはこんな感じ。このアングルなら、若干ハイデッキになっているのが見て取れると思います。これだと小柄に見えますが、4840ミリのEワゴンに比べても20ミリほど長いという衝撃の事実。もちろん狭い道などでは少し気を使いますが、そんなに神経質になるほど取り回しが悪いわけではありません。市街地でつかえて困るということはあまりないでしょう。ホイールベースが長いので、Uターンのときなどはちょっとマージンを大きくとる必要はありますが、ハンドルの切れ角が大きいのか、これもまた神経質になるほどではありません。
 210馬力を発生させるV6の3000CC・VQ30型エンジン。ぶっといトルクで重たい車体を加速させる大排気量エンジンです。これのほかにVQ30DETという、ターボ付きの280馬力のモデルがラインナップされていました。ノンターボのこのモデルでも加速力は充分ですし、日本国内の高速道路を普通に走る分には必要にして充分でしょう。120キロからでも加速力は抜群ですので、高速道路の追い越しなどでストレスを感じることはまずないでしょう。
 ただ、回り方とか音はちょっとガサツというか高級車らしからぬ乱暴な印象。アクセルを開けると一気にパワーが出るような感じで、このあたりがちょっとツライ。こういうのは長距離乗ると差が出るので、これはなんとかしていただきたいところでした。こういうフィーリングが好きだって人も多かったんでしょうけれどね。
 内装はこんな感じ。質感に関しては、「ドイツの実用車」メルセデスのW210とタメ線です。いや、いい意味ではなく悪い意味で。モロにプラスチックがむき出しなのはともかく、それでも高級感を出そうと思えば出せるもんだと思うんですが、そのへんの工夫は一切されていません。高級車だと思って乗るとがっかりすること請け合いです。カーナビのモニタがビルトインされているあたりが最近の車っぽいですが。
 シートはあまりよくはありません。ふかふかすぎて腰が沈むのと、座面が短くてある程度の距離を乗ると疲れが足と腰に来ます。また、ワインディングでのサポート能力は皆無ですね。体をそのまま持ってかれるので、これでスポーツ走行をしろというのはちょっと酷というものです。
 パネル部分のアップです。インパネの配置はかなり親切で、手が届くところに各種スイッチが使いやすくレイアウトされている感じがして嫌いではありません。メルセデスと同じく「実用車」として考えると、これはこれで結構充実した車だと思います。
 メーター周り。特にこれといったギミックもない代わりに見やすい気はします。下にもあるとおり4速しかATのギアはないはずなんですが、インパネをよく見るとギアの段数表示のところに「5」の文字が(もちろんどうやっても点灯することはありません)。5速まで変速できるCVTのモデルとこのへんは共用なんでしょう。
 ATはなんと4速です。このモデルのセドリック/グロリアにはエクストロイドCVTという、大排気量の車にも使えるようになった画期的なCVTシステムも用意されているのですが、これは普通の4ATのモデルでした。別に5速だから偉いとかってことではぜんぜんないですけど、これくらいのパワーになると5速にしたほうがよいのではないかなあという気はします(逆に4速のATでこれだけの燃費を実現しているのは凄いと思います)。
 そのかわり、マニュアルモードにすると自分である程度まではギアを制御して走ることも可能。「ある程度まで」というのはほんとに「ある程度」で、レッドゾーン寸前では勝手にシフトアップしますし、高回転域から低いギアにしようとしても、オーバーレブを防止するためか安全範囲まで回転数を落とさないとシフトダウンができないようになっています。
 慣れないとなんだかよくわかんないんですが、慣れると結構遊べます。ただ、ほんとに「遊ぶ」だけで、実用的かというとそうでもなく、買ってこれがついててもたぶん一ヶ月遊べば飽きるだろうなあくらいのものではありますが。エンジンのおいしいところを積極的に使うというMT車の思想とは似て非なるものだなあという印象ですね。普通のATにちょっと細工をしたもの、程度に思っておいたほうがいいと思います(マニュアルモードATを搭載する車すべてがそうだとはもちろん言いません)。
 ただ、シフトチェンジがモタつくことが多く、チェンジをしても実際にギアが変わるのに2、3秒のタイムラグがあったり、停止時にちょうどMT車でのノッキングのような感じで車体が揺れたりと、デメリットもないわけではありません。これは個体差の可能性がありますが。
 液晶モニタ部分の拡大。カーナビになるのはもちろんですが、車両情報や理論値での燃費情報などを表示することができます。中でも面白いのは「燃費情報」ですね。プリウスなんかだとおなじみのアレですが、同じようなものがついてます。これがあるとなんとなく燃費走行を心がけたくなるから不思議。操作感覚も悪くなく、非常に無理のない位置にありますので、使い勝手は悪くはないです。ですが、エアコンの情報とかもここに表示されるので、走行中にみだりに操作したりするとちょっと危険かも。
 ちなみに、カーナビとしてはちょっと古臭く、いまどきのものと比べるとちょっと見劣りするかもしれません。
 後部座席はこんな感じで、一見すると四人乗りっぽいですが一応合法的に五人が乗れます。この後部座席、実際に座ってみると多少タイトな感じはするもののホールド性は比較的よい感じ。セドリックとグロリアで同じなのかどうかはわかりませんが、少なくともこれだけ見ると、「送迎などのために、ゆったりと足を組んで座ってもらう」ために使う車としてはちょっと使いづらいよなあ、というのが正直なところではありますね。ただ、別に長距離で苦痛になるようなつらさではないので、四人でドライブだとかってことになっても普通に快適に移動はできると思います。
 トランクはなかなかの大容量。下のほうまで大きく開くので、重いものの出し入れもやりやすいんではないでしょうか。ちなみにトランクスルーはありませんので、長尺物は入れられません。
 おそらくこのトランク、「ゴルフバッグが何個入るか」が基準なんでしょう。ゴルフやらないんでよくはわかりませんが四つくらいは入りそうです。四人でゴルフに行くなら問題ないよ、という感じですね。
 最初はどうやって開けたらいいのかすごく迷ったんですが、なんのことはない、運転席側ドアの下にあるレバーを引っ張ると開きますし、キーレスエントリーのボタンでも開けられます。電動ですので、ちょっと閉めれば簡単に閉まるあたりも演出でしょうか。上にちょこんと付いてるのはDVDナビの本体です。
 それなりに大インチのタイヤが入っていて、さらに車高も気持ち低めになっているのがグランツーリスモの特徴でしょうか。コーナーでの踏ん張りはある程度ないわけではないんですが、しかしサスペンションがアレでは……。これがもうちょっとしっかりした仕事をしてくれるサスだったら、ワインディングがそれなりに「楽しめる」車になっていたんじゃないかなあ、という気がしてなりません。

○外観(クリックで拡大します)


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